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hito meguri


甘く温かな季節が終わっていく。

気候は不安定ではあるけれど

厚地のコートを着る機会は

もう殆ど無い。

夏に出会い

冬は二人で

暖めながら過ごした。

暖めたのは

からだもそうだけれど

こころも

そして春を二人で待った。

待った甲斐があったと思える程に

その細やかな季節を

存分に楽しんだ。

彼女は

その季節との別れが

どうも惜しいようだ。

気持ちもはとてもわかる。

側で、共に駆け抜けたからこそわかる。

二人で過ごした

最初の春は終わる。

こればかしは仕方がない

しかし春はまた来る

快く送ってあげよう。

最初の春を

僕は忘れない

きっと彼女も

忘れずにいてくれる

二人で持ち合わせた記憶を

大切にしまい込む。


次に来る季節を

下駄の音が響いていた

香りのついたシャボン玉を飛ばした

あの季節を

覚えている。

二人が過ごした

初めての夏の記憶

これで一巡り

これからは季節が巡る度

思い出が増えていく

過ぎ去るのではなく

累積していく

四季それぞれに

記憶が

刻まれていく。


駆け抜けるように生きている

貴女が好きです。

後は振り返らなくていい

そのかわりに

側で僕が

その全てを

その記憶を

覚えているから

立ち止まって

過ぎ去るモノに

憂う時があったとしても

大丈夫

側にいる僕が

二人の記憶

その物語を語る。





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