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ため息俳句 白菊舞う

朝晩は冷え込むようになった。
霜も降りた。
畑の縁に咲いている白菊が紫に色を変えてゆく。「移菊」と呼ばれるものだ。

白菊やついはほのぼの明けの色


 さて、「菊舞う」の「舞う」とは、「畑の作物が枯れる」という意味らしい。そこで、菊が枯れてゆくのは舞うなのだそうな。
 例えば、「茄子なすびの枯るるをば、百姓みな―・ふといふなり」〈咄・「醒睡笑」・七〉とか。菊は、食用でもあるし、作物の仲間であるからね。あるいは、菊の花は枯れて散ることもない、ただし小さな花びらの一枚一枚は、反ったり、萎れたり、ねじれたりしてくる、その形が舞いの仕草に似ているので「舞う」というのだという説があるらしい。自分としては、眉唾のように思うのだが。 
 ところで、「移菊うつろいきく」とは、和歌の平安以降常套的な題材となってきた。霜が降りて紫に色変わりする白菊の変化は、心変わりの比喩としても人気であったろう。
 「うつろひたる菊」である。
 そのことに触れると、・・・・面倒くさくなる、明日にしようと思ったのだが、ここで止めよう。

 そこで、一つこの歌を。

白菊のうつろひ行けば身のうちを毒の流るるさまかと思ふ 晶子