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ため息俳句 運動会

運動会が近づくと憂鬱であった。
原因は分かりきっている、云うまでも無いでしょう。
人より運動能力が劣ると思い知るのが、この行事だった。
これは、案外根深いトラウマになる。
それなのに、今日は孫の運動会に誘われてのこのこ出かけた。
この孫も、保育園の時のリレーで、お前のせいでたんぽぽ組は負けたと云われて、べそをかいたそうな。
その子の初の運動会なので、爺と同じ心の傷を負ってはかわいそうだと、ついつい心配になってのことだ。
わざわざ早起きして電車で向かったのだ。
都会の小学校も児童数が激減していて、全校生徒で十二学級しかない。学年2クラスぽっち。
我らの頃は、田舎町であったが五十人一クラスで九組まであった。学校が子供たちでごった返していた。やんちゃ、乱暴者、いろいろいた。
孫の学校の子供達はみんなこざっぱりとしていて、号令一下整然と運動会が進行してゆくのだった。親たちも静かなものであった。
爺もカメラ持参で、孫一人をクローズアップで狙うので、運動会そのものは見たのか見なかったのか、・・・・それはそれで愚かなことだ。
幸いクローズアップした孫の表情は、終始楽しげであった。徒競走の順番を待つ時の不安そうに緊張した様子も、かえって好ましかった。結果は、走者五人中三着。それでも随分誇らしそうであった。
爺は、ほっと胸をなで下ろしたのであった。
(マッタク愚カシイコトデアリマス。)
これからの長い人生では、何が起きるかなんてまったく予見できないというのに。

行進に伏し目がちなる秋思の児

徒競走の「徒」ってなんだろ運動会

足のおそし役目果たせてバトン継ぐ

はちまきの恥ずかしそうな児もをりし

借り物に「おじいさん」なら我を呼べ

転びたる児が我が子ならずば日本晴れ

とりどりの旗が振られて運動会

競うこと競わせること人の秋