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ため息俳句88 青梅と桑の実

昨日は、妻の古希の祝いを子供たちが催してくれた。よい一日であった。とは言え、中華街はちと遠くて、旨かったが、お疲れさんであります。

そうして、今朝は朝から気温が上がっている。畑はちょっと様子を眺めるだけにして、散歩に。
麦秋の田園風景が見たくなってその方向に歩き始めた。いくつかの集落を通り過ぎてゆく。その道々には黙って通り過ぎできないお地蔵さんと神社があって、ポケットに小銭を探り、必ずお参りする。今朝は、昨日集合した家族全員の健康を感謝し、今後も無事息災をとお願いしたのだった。

とある大きな農家の脇で、黒っぽい木の実が散らばっていた。

桑の実であった。

たらちねの 母の邊にゐて くろぐろと 熟める桑の實を 食ひにけるかな  斎藤茂吉


茂吉は、そう歌うのだが、吾ら三人兄弟が母から厳しく言われていたことがあった。
それは、この時期にあちこちで見かける桑の実と青梅は決して口にしてはなないということだった。

青梅(おうめ)

青梅と桑の実には毒があって、食べるとお腹を壊すのだから絶対に口の入れてはいけないというのだった。当時の自分らが母の言いつけながら半信半疑であった。遊び仲間の中には気軽にこれらを食べるものもいたが、みんなぴんぴんしていた、桑の実をしこたま食べて口の周りが紫に染まっても平気な顔をしていた。
そんなであっても、母の禁止を破ることは多分兄も妹もしなかったと思うが、自分は時折友達に誘われて口にしたことがある。桑の実や青梅を見ると、そのささやかな裏切りの味がよみがえるような気が、この年になっても、・・・、というのは嘘だが、後ろめたい気持ちを感じたということは覚えている。
母の云うことは正しいことであったと、後年知った。確かに熟していない青梅には毒性があるし、桑の実も大量に食べると腹を壊すという。

母禁ず青梅桑の実たわわなり


桑の実、子供の頃は「ドドメ」と呼んでいた。