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ため息俳句 通知

 ある時期、深く関わることがあった同僚にして友人が、長い患いによって昨年暮れに亡くなっておられたと、奥さんから連絡が届いた。今年も、いつもの通り自分からの賀状は三日に投函した。松がとれてそのお返事ということだろう。
 自分より二つ上の男で、理路を優先するあまり、それが型破りと受け止められて、人によって評価が分かれていた。それでも、不思議と自分とは馬があったのか、組んで一緒によく仕事をしてきた。
 そうしている内に、彼は個人的な事情で仕事を辞めて自分の視界から消えてしまったが、律儀に賀状と暑中見舞いと、山好きな奴であったから時折に登山報告が届いた。その葉書の文字は、いつもきちんとした楷書でかつての知的な「狼藉振り」を忍ばせる、端正な筆跡であった。
 すでに病を得てのころだが、彼は旅の途中に拙宅に一泊した。それ以来逢うことはなかった。その時、彼は病で声を失っていて筆談になった。その走り書きする筆談の文字も明瞭で、読み辛いということがなかった。その夜は、酒も少し飲んだ。本当は情のある人なのだ。血の通う論理を心がけるところがあるのだが、理解されなかった。
 いろいろ思い出してしまう。自分の人生なんていうと照れるが、一番面白おかしく生きていた頃の友人である。
 ちょっと、きつい。

寒の空差出人は夫人なり