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ため息俳句  合歓木と鳰

 「合歓」とは、《合い歓ぶ》ということだ。もとは夜間、葉と葉が合わさって眠るように見える。そんな様子からか中国では夫婦円満の象徴とも云われるらしい。夜合樹などと呼ばれることもある。
 この時期、散歩コースのB沼公園に一本だけある合歓木に花が咲く。

今朝も過ぐ合歓の花咲く沼辺なり

 合歓の花は、夕方に咲き始め、翌朝にしぼんでしまう。ものぐさの自分の散歩は午前十時ごろである、それでも花はまだ見ることができるのだ。

さて、子規の句にこんなふうな作を見かけた。

誰が魂の梦をさくらん合歓の花 子規

「梦」とは、「夢」と同じである。読み方もユメ。なんともロマンチックな。 

いったい誰の魂の夢に咲いているのだろう。合歓の花は。


確かに、そんな気にさせられると、自分も思う。

 この沼には多くの渡り鳥が羽を休めに飛来するのだが、今はカルガモの姿さえも見えない、生い茂る葦に隠れているのか、あるいは何処かへ去ったのか。浮草のある水面に、カイツブリの頭が見えたり消えたり、潜水を繰りかえしているのだ。よく見ればカイツブリのペアであって、鳴き声は互いに呼び合っているのだろう。カイツブリは冬の季題であるが、留鳥として周年見ることができる。こんな時期の沼の寂しさを少しだけ慰めてくれるのだ。

にお鳴きて一羽と見れど二羽であり

            注、「鳰」は、〈カイツブリ〉。