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CUBA 医療視察(見学)~2015年~


はじめに

キューバの医療視察について情報収集をしている医学生さんから2024年の今、メッセージがありました。(Twitterでちらっとつぶやいたことがあったので)
個人的な体験でもお役に立つならとメモ程度のものですが、noteにしました。とはいえ、帰国後は何もキャッチアップしていないので、
あくまで、2015年の個人の記録として見ていただければと思います。
(視察というより、見学のほうが相応な気がしますが)

きっかけは米国との国交正常化のニュース

キューバの音楽とサルサとお酒に関心があったので、
いつかは現地を訪れたいと思っていました。
そんなおり、2014年の12月に大きなニュースが流れました。
キューバと米国の国交正常化方針の発表です。
え?スタバとマクドナルドがキューバにできてしまうかも!!
その前に行かなきゃ!と思いました(発想が浅いw)



補足
2015年7月オバマ政権時に正常化し両国に大使館もでき、キューバの経済は賑やかになったそう。しかしトランプ前大統領が制裁強化策を実施。その後バイデン政権は対キューバの規制を緩和しています。


観光だけでいいのか?

1月末にはチケットを確保し、
2015年3月末の旅行が確定しました。
直行便がないので、メキシコやカナダを経由する人が多いと思います。
米国とは国交がないので経由できません。
わたしはトランジットがスムーズなトロント経由を選びました。
(旅行記ではないので、詳細は飛ばします)

ガイドブックやネット記事を読み、ヘミングウェイも読み、
現地でライブとモヒートを楽しみまくることを想像していたところ、
大学院時代の先輩が、
海外旅行の際に福祉施設を見学した(東南アジアだったと思う)
という話を聞きました。

え?そんなことできるの?
キューバは医療と教育に重きをおく国です。
(医療費無料、識字率は98%)
もしかしたらわたしも見学できるのか?
さっそくキューバの保健医療について調べてみると…
意外と長寿(2015年に調べていた数値では男性76才、女性81才)
新生児死亡率や5歳未満の乳児死亡率はカナダやUK、米国と同等
そして最も興味関心をもったのは、
全国民に家庭医がいる!!
ということです。
住民約800人ごとに1人の医師が定められているそう。
公衆衛生的におもしろい!
ということで、
キューバ在住の日本人の方がおられる現地のエージェントさんに連絡してみました。
(地球の歩き方に載っていた記憶)


エージェント様様

医療視察というものは、通常「団体」で「計画的に」おこなうものです。
なのに、「個人」が「思いつきで」打診するという、
完全にスルーされてもおかしくない問い合わせにも関わらず、
丁寧に応えてくださいました。
(本来はとても難しいことだそうです)

●必要な手続き
キューバの厚労省への申請のために、下記を提出します。
・一般的な個人情報
・勤め先
・看護師の職務年数、専門性など
・看護師免許のコピー
私は、保健師資格についても併せて提出しました。
申請はしたものの、許可がおりるかはわからないので、
あとは祈りながら待つのみでした。
(しかも渡航まで1か月しかなく、期日に間に合うかどうかもわからず…)


許可がおりました!

エージェントさんのご尽力により、無事に申請が通り、
下記のうち、希望していた①と②両方の視察の許可がおりました。

CUBAの医療体制は
①家庭医
②地域の診療施設「ポリクリニコ」
③総合病院

があります。

①の家庭医は、地域の住民を担当しています。
診察の結果、必要であれば、
②を紹介して詳しい検査や治療、予防接種などがおこなわれます。
家庭医が②に赴いて検査や治療をすることもあるそうです。
その結果さらに治療や検査が必要だと、③へ紹介という流れです。

ちなみに、現地では、
医療ガイドのような方と、日本語通訳の方2名体制で
アテンドしてくださいました。
医療職 ⇔ 医療ガイドさん ⇔ 通訳さん ⇔ わたし

家庭医のもとへ

団地を担当している女性の医師。彼女も団地に暮らす住民の1人です。
その団地の1階に診察室があります。

かわいい入口

診察室は自然光が入り、机にはお花が飾られ、あたたかい雰囲気です。
患者さん(というより、住民さんという表現が合っていそう)の
診察(というより、面談・相談という表現が合っていそう)に、
同席させてもらいました。(撮影許可をとっています)

診察室というより執務室という感じ

●担当住民
 1196人(うち60歳以上は35.6%)
●診療時間
 8:00~17:00
●週3日は家庭訪問
家庭訪問には基本的に看護師が同行するが、
他のスペシャリストが同行することある。
●主な役割:地域住民の健康管理
・家族がわかるようにカルテをつくっている
 個人だけでなく家族単位でアセスメントする
(例えば、高血圧が多い、肥満が多い家庭などと把握できる)
・妊婦もフォローする。出産・退院後は15日以内に訪問して、
 その後は1ヶ月に1回は訪問する。
(ここでも家族単位のアセスメントとプラン立案が効く)
・健康診断
 通常半年に1回の健診があり、それをもとに生活指導などをする

直近の課題:高齢化と生活習慣病
・easyな食事(ピザやサンドウィッチなど)が多い
・砂糖が多い
・野菜を食べる習慣がない
・運動不足ぎみなので、団地では体操の時間がある
(参加率はきかなかった)
・高齢者が多いので長年の習慣を変えるのは難しい

心がけていること
関係を築くのが大事。相手の懐にはいれるよう、信頼を得られるように。
話す時間より、話を聞く時間のほうが長い
診察時間以外に、家に来てしまう患者さんがわりといた。
 
診察時間があることと、自分たちで対応できるように伝え続けた(教育という言葉を使っていた記憶)。
(→これは自分自身の時間を確保するという意味でも大切だと思う)

簡単ですが以上です…
個人的には、日本の保健師にも近しいなと思いました。
現地に暮らすキューバ人の知人は、
自身の健診データとその意味をよく理解しており、
家庭医が都度教育的関わりをしているのだと感じました。
とはいえ、
行動変容するかはまた別の話で、野菜の摂取について、
「葉っぱなんか食べたくない。うさぎじゃないんだから🐰」
と言っていたし、1日1食でした(笑)

気になったのは、家庭医の育成や品質マネジメントです。
滞在時は確認できませんでしたが、
きちんとした視察団の報告にはあるかもしれません。


おわりに

ということで、当時のメモに記憶を少し添えてみました。
もっと丁寧に記録しておけばよかったと今になって思います。
ポリクリニコのまとめはそんなに残っていなかったし…
(後悔先にたたず)

今回振り返るきっかけをくれた医学生さんどうもありがとうございました。その方は健康経営や産業保健にも関心がおありだそう。
社会主義国における産業保健ってどうなのでしょう?
もし視察されるのであればお話を伺ってみたいです。

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