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【西郷さんとシドニー 1】はじめに

「いいこと沢山ある」

西郷輝彦さんとご婦人の明子さんがシドニーを経つ前に下さったカードに綴られた私へのメッセージ。

今では西郷さんが日本の全ての人々へそう伝えている気がする。


大変な時期はもうすぐ終わるよ。
これから先、いいことが沢山待っているよ。
だから大丈夫。
もう少し。
日本のみんな、頑張れ!


この2年間、コロナ禍に皆が共に苦しみ抜いた。
西郷さんは癌との戦いに最後まで屈することなく立ち向かい、果敢に挑んだ。
そして2月20日、新世界へと旅立たれた。
日本での一時帰国中に再会できると信じ、それを願い過ごした2ヶ月間の滞在を終える3日前のこと。
訃報を伝える明子さんからのメッセージをなぜかすぐに見る気になれなかったのは、私の心が受け入れがたい事実を察しそれを拒否していたからかもしれない。


スターという輝かしくも壮絶であろう長い旅路を終えた西郷さんを思う度に、最後にいただいた激励のメッセージが脳裏に蘇る。
常に全てに全力で挑んでこられた西郷さんからの想いがこもったメッセージに恥じぬよう「頑張ろう」と下腹にグッと力が入り気持ちが引き締まるのを感じる。


数年来の知り合いというわけでもないのに、なぜかとても親しい気持ちにさせてくれるのは、西郷さんと明子さんの魅力の一つなのだろう。
あるいは恐らく人生で初めてであろう、著名人であるが故の緊張感から解放されたお二人の貴重な数ヶ月という時間を、少しばかり共有させていただいたことで普通よりも近く感じられたのかもしれない。


西郷さんは、私が人生で出会った中で最も英知に富んだ尊敬する人だった。そして同時に人を魅了する、チャーミングな永遠のアイドル。
年齢とは無関係に無邪気さとユーモアを有する、まるで天使のような人だった。

「可愛い!」何度そう思ったことだろう。

70代の男性には似つかわしくないその賛辞をとても自然に身にまとっている人。


西郷さんはもう舞台に立つことはないし、ドラマにも映画にも出演しない。
それでも私が見た西郷さんの魅力を、素顔の一面を、多くの方とシェアしたいと思い、書き記したいと感じた。


西郷さんを知る人も、知らない人も笑顔になるような、そんな素敵な人のちょっとした話しになるであろうと思う。

日々の気づきを大切にし、それをできるだけ多くの方とシェアできたら嬉しいと思っています。サポートしていただけるととても励みになります。