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句や歌

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コギト エルゴ スム

コギト エルゴ スム

微粒子の集まる硬さやわらかさ
存在まさにここにあります

恋文の和紙の毛羽立ち
行きし君を追うごとく急く夜の心臓
#短歌

こころとからだ

こころとからだ

ぼろぼろのからだが嗚咽を漏らしつつ消化するよるごはんのうどん

優しさに慣れていなくて触れた痕じんわり痺れてくるふくらはぎ

飲み込んだ吐瀉物塗れのこころごと吐き出せる場所を探しているの
#短歌

肉体のこと

肉体のこと

せはしなく、さみしく、くちびるかみしめて、心の臓から血の味がする

五感とか皮膚とか自己(ぼく)とか他者(きみ)だとか、現象全てが語る【断絶】

底無しに濁った井戸では空もなく溺れることしか出来ない蛙

血の管を渇いた砂がながれゆく、君の唾液が渇いたからだ
#短歌

ゆめまぼろしの

ゆめまぼろしの

時は満ち、排出されし黒色の血液、夢の卵の堕胎

醒めやらぬ夢に迷えばそれは永久、出逢えなかったことがはじまり

褪せていくパステルの夢、紫陽花の蕾ひらかぬままに、さよなら

一切は、消えてゆきます、まぼろしのさざれゆく末、美しき虚無

そういう星に生まれたんです

そういう星に生まれたんです

☆銀色のハードカバーに挟まれた星のひかりの洩れる図書室

☆偽物の星を盗んだ悪い子をおしおきとして宇宙に放る

★地球って息が苦しい どの星で生まれるべきだったんです 僕は

★今はもう死んだ星たち美しい (ひきかえ僕の生ぐさい肉)

★もういやだ星になりたい だあれにも観測されぬ光らぬ星に

忘我的カカオ

忘我的カカオ

◆熱っぽい渦の深みは蠱惑的 ホットショコラの果ての見えなさ

◆脳みそを甘く溶かしてマシュマロとバナナといちごでフォンデュしましょう

◆嘘ばかり吐いている様な心地して噛み砕きつつホワイトショコラ

◆ チョコレート沼の女神よ 私が落とした「ふつう」の恋を返して

種子、果実

種子、果実

●衝動も子宮も要らない種無しのぶどうのように僕は生きたい

●零歳児「生まれなければよかった」と潰したショートケーキの苺

月

◯てのひらにさらさらふれる青白いひかりのこなを月光という

◯あまみずとつきのひかりと降り注ぎ頬の柔毛に露とまぶさる

◯ぽっかりと空に開く穴こじあけて全き白に落ちてゆけたら

◯お月さま、白い愛しいお月さま、せめてあなたに愛されたなら

兎の眼

兎の眼

◇あまりにもうさぎ的だね 僕を見て仄かな死の香に潤むまなこは

◆囚われてならない枷を愛と呼ぶ 故に救いは死にのみぞあり

◇流し込む唾液が白い喉を焼く 脈打つ血管(ちくだ)締めるべきかは

◆虚妄なる我が目、耳、喉、全臓器、塞いでくれよ、満たしてくれよ

きらきら

きらきら

◇いつもより儚く翳る君の目の睫毛にきらめく水瓶の月

◇眠れない冬の夜空の星達の淡い光のフェイスパウダー

◇世界中シャンパン色に染まりゆきグラスの底に僕らはふたり

◇真夜中の光の底で星屑と泡(あぶく)と君と白くきえゆく

◇きらめきの輪郭とけて世界は無、あるいは光、すべての不在

月

●蛇じゃない貴方は寂しい夜に吹く笛の音では来てはくれない

●黒髪にねばつく欲がこびりつき離れがたくてとても哀しい

●間違いを犯したくなる月欠けの夜に寂しい狼は来い

はつこいシリーズ

はつこいシリーズ

◇ソーダ水はねるグラスに腰かけて浴びたシャワーのような初恋

◆ミシン糸絡まり続けて進まない雑巾縫いのような初恋

◇喉の奥透き通る小骨引っ掛かけて飲む液体のような初恋

◆ 電子辞書 あ から延々見続けてやっと見つけたような初恋

◇いつもほんのちょっとで逃す乗り換えの青い列車のような初恋