「同人誌表紙デザイン」好き勝手3案作ってみた!
「同人誌表紙デザイン 5案作ってみた!」本編・続編(計7案)は、オーダーに沿ったデザイン・オーダー内容のデザインへの落とし込み方を記事にしました。
今回は趣向を変え「デザイナーの私が好き勝手デザインする」企画です。
普段は、商業・同人問わず、
「自由にデザインしてください」
「好きにデザインしていいです」
「デザイナーの感性でデザインしてください」
「あなたらしいデザインをお願いします」
などの言葉をクライアントにいただいたとしても、その言葉の裏を考えて、求められている役割を分析してデザインしています。
「ポートフォリオのデザインの、平均値を求められている?」
「きれいめなデザインのデザイナーだと思われることが多いから、きれいなデザインを求められている?」
など、様々な可能性を考えます。(分析のみでは情報が足りない場合、ヒアリングをした上でデザインしています。)
そんな、普段は求められた役を演じるデザイナーの私が、「本当に好き勝手デザインしたらどうなるのか」を見ていただくのもおもしろいと思い、この記事を書くことにしました。
↓ 本編
↓ 続編
デザインの条件
今回は以下の条件でデザインすることにしました。
好き勝手に
自由に
デザイナーの感性で
あなたらしいデザイン
タイトル
「レッドスパイダーリリー」
英語表記:Red Spider Lily
イラストレーション
自由にレイアウトできるよう大きめ
(赤い枠がA5最大の大きさ)
あらすじ
主人公「月(ツキ)」(左のキャラクター)は、何年も前に他界した10歳年上の初恋の女性「紅子(こうこ)」が忘れられない。ある日、紅子にそっくりな「朱音(あかね)」と出会う。
ペンネーム
ミズアコ
アルファベット表記:Mizuako
サークル名
水鏡庭園(みずかがみていえん)
アルファベット表記:Mizukagami Teien
ジャンル
百合(一次創作)
本のサイズ
A5
背表紙
5mm
8案目
イラストレーションを加工し
逆さにする
普段は、「イラストレーションを立たせる」「世界観を伝える」など、クライアントの作品がよりよく見えるようデザインしています。
ですが、「自由にデザイン」していいのなら、以下の内容でデザインしてもおもしろそうだと考えました。
キャラクターを逆さに
海の底に落ちていくイメージ
彼岸花が巻きついて2人を海に落としていく
キャラクターにノイズなどの効果を加える
イラストレーションにかかるように、水の揺らぎのテクスチャを入れる
(キャラクターの顔が弱くなる分、雰囲気が強くなる。)
完成したデザインがこちら!
線のノイズで時間を越えてくるイメージを表現し、書体もデジタル感のあるものをセレクトしました。
PP加工(グロス)の表紙を想定してデザインしました。
もし表紙用紙選びも自由なら、「ファンタス」の「赤」(片面に赤い光沢のある紙)が似合いそうです。
表紙・裏表紙(表1・表4)は上質紙系の白い面にフルカラー印刷、表紙裏・裏表紙裏(表2・表3)を赤い光沢面にすると表情が出そうです。
中扉もあれば、更に本としてのストーリー性が増しそうです。
製本イメージ
中扉にはあえて彼岸花を入れず、表紙裏(表2)の赤で彼岸花を連想させる作りにしました。
9案目
表紙にはあえて
メインのイラストレーションを入れない
通常はカラーのイラストレーションが納品されたら、フルカラーの表紙としてデザインをします。(オーダー内容によりデザイン費も異なるため、受注時に仕様の確認もします。)
ですが、本当に「あなたらしいデザイン」をしていい、「好き勝手」していいなら、「カラーのイラストレーションがあるから、表紙(表1)に必ず入れなくてはいけない」という制限はないはずです。
イラストレーションを表紙に入れない
表紙はフルカラーにしない
2色刷り(1色は赤)
イラストレーションはカラー口絵に
表紙用紙・遊び紙・口絵など、装丁の仕様込みで考えたい
完成したデザインがこちら!
「レッドスパイダーリリー(赤い彼岸花)」が死を連想させつつ、キャラクターの1人が他界しているため「スカル」を入れました。骨になってしまっても、その場に彼岸花は咲き続けているイメージです。
禍々しい雰囲気をマーブル模様で表現しています。
● 表紙用紙
「クラフト紙」
好きな紙のためセレクトしました。
● 遊び紙
「タント」D-52
質感を感じやすい、少し凹凸のある深い赤の紙をセレクトしました。
● カラー口絵
「コート紙」
表紙・遊び紙と、質感に違いがあった方がアクセントになると考え、光沢を感じるコート紙をセレクトしました。
製本イメージ
10案目
キャラクターの顔を覆う
ロングヘアのキャラクターは、時間を越え主人公に会いに来た「紅子(こうこ)」なのか、「紅子」にそっくりな「朱音(あかね)」なのか、どちらとも受け取れて得体の知れない印象のため、何かで顔を覆うことで「よくわからない・はっきりしない」イメージを表現することにしました。
顔を何かで覆う
できる限り顔を大きく見せたい
(顔を何かで覆っていることをわかりやすく)
(イラストレーションは最大サイズ)
完成したデザインがこちら!
右のキャラクターの顔を、欧文のタイトル・殴り書きの×印で覆い、得体のしれない存在であることを表現しました。得体のしれない存在ではない、主人公(左のキャラクター)の顔ははっきり見せています。
×印を外して、文字のみで顔を覆ってもいいかもしれません。
イラストレーションを、ドットに変換してもおもしろそうです。
背表紙を彼岸花の茎に見立ててみました。
10案目はパターン・バリエーション含め、すべてPP加工(グロス)の表紙を想定してデザインしました。
まとめ
いかがでしたか?デザイナーの自我を出した今回のデザインは、本編・続編のオーダー内容に沿ったデザインとは、少し異なった印象に見えたのではないでしょうか。
● 好き勝手「3案」
デザイナーの感性で制作したデザイン
繊細なものだけでなく、かっこいいものも好きなため、好き勝手デザインした3案は、通常よりも少し尖ったデザインに仕上がったと思います。
ですが、主題が見えにくく、作家のやりたいこと・方向性もないため、漫画の本編の世界観も見えない状態です。ビジュアルだけで組み立てた印象が強く、とても表面的な印象を受けます。
● オーダー内容に沿った「5案」
作家の希望に沿いつつ、作品をよりよく見せるよう設計したデザイン
キャラクターの顔に目が行きやすく、主題がわかりやすいです。作家のやりたいこと(どんなユーザー層に、どんな作品として届けたいのか。どんな雰囲気にしたいのか、など)も含まれているため、全体的にわかりやすい印象を受けます。
クリアなデザインに見えます。
● 同一オーダーの「3案」
作家の希望に沿いつつ、作品をよりよく見せるよう設計したデザイン
右の案はアイデアの幅として空気感を優先していますが、オーダー内容(病み系など)がデザインに組み込まれているため、漫画本編を魅力的に見せるためのデザイン(物語への導入の表紙)という印象を受けます。
表紙デザイン10案の中で、特に私らしいデザインだと思われそうなのは、
きれいめ
明るめ
イラストレーションを立たせている
タイトルを立たせている
以上の条件を満たしたデザインである以下の2点です。
このようなデザインを想像して、「デザイナーの感性で!」「自由にデザインしてください!」とオーダーをし、表紙に自分のカラーイラストレーションのない2色刷りのデザインが仕上がってきたら、依頼者の落胆は大きいのではないでしょうか。
これが、「デザイナーの感性で!」「自由にデザインしてください!」とオーダーをいただいたとしても、クライアントが本当に求めているものが何なのか、分析・ヒアリングをした上でデザインするよう心がけている理由です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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