現代語訳『伽婢子』 幽霊諸将を評す(10)
「ところで、お前は三河国の牛窪《うしくぼ》を出た後に、武道修行と称して諸国を巡り、四国で尾形某《なにがし》と出会って軍法を伝授され、城の縄張りに関する秘事を得たという。しかし、お前が縄張りを築いた城が今のどこにあるというのか。今川家に嫌われて甲府をさまよい、信玄に召し抱えられて知行をもらい、これを自慢するためにわざわざ駿河に行ったのは若輩者の所業で、世の笑い種《ぐさ》であろう。幸いにも武田家に用いられ、軍法師範の名を盗んで星霜《せいそう》を重ねたが、信玄はいまだに大業を成し遂