現代語訳「我身にたどる姫君」(第二巻 その41)
二宮は幼い頃からひたすら優美で淑《しと》やかな人となりで、数々の晴れがましい政《まつりごと》も面倒だと思っていた。このため、いまだに我が身から離れぬ音羽山《おとわやま》の姫君の面影のみをひたすら恋しく、悲しく思って嘆いていた。
音羽山音にも聞かぬ恋ながら
見し世の春はめぐり来《き》にけり
(音羽山の姫君はどこにいるのだろう。噂《うわさ》にも上がらぬまま、初めて出会った春がまた巡ってきてしまった)
「どうかあの女の行方をお知らせください」
神仏に願《がん》を立