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後藤まりこアコースティックviolence POP『未来』リリースツアー《タペタム》@岡山ペパーランドに行ったときのこと

2024年1月26日金曜日、仕事の休みをとって後藤まりこさんのライブに行った。
昨年末に発売された後藤まりこアコースティックviolence POPのセカンドアルバム『未来』のリリースツアーの一つで、岡山ペパーランドで開催されたもの。

わたしはなにかと遅刻する。予定どおりになにかをこなすのが下手だ。
この日も予定時間より遅くに家を出ることになってしまったため、法界院駅から歩き岡山大学の外観を少し眺めてからライブハウスに到着するという計画は早々に崩れた。それどころか、岡山駅で乗り換えて法界院駅から行くルートだと開演時間に間に合わないことが判明し、岡山駅から25分前後の道のりを歩くことになった。それもいいと思った。
厳しい寒さのなかとはいえ、ダッフルコートまで着込んでいることもあり、歩いていると胴体自体はむしろ汗ばんできたから、コートのボタンは外した。それでも油断していると手の感覚はなくなりそうになるから、ポケットに手を入れて歩く。手袋をもってきていたけれど、歩くことに集中していて、そのひと手間をかけられなかった。

6時50分くらいにライブハウスに到着。
間に合ってよかった。
中に入って少し本を読んでいたらすぐに開演時間に。
やっほーさん、Theeノリノリサーファー's、ヤジマXさん、赤いくらげの夏生さん、後藤まりこさんの順番でパーティは進んだ。

初めてふれる音楽もあった。「自分はいま未知のものに遭遇しているんだ」と自覚しながら未知のものに直接ふれる体験をすることは、いまの時代なかなか難しいことだと思うことがある。そういう意味で、わたしはこの日、さまざまな角度から刺激を受けた。来てよかった。パーティの最中も、帰り道を歩いているときも、強くそう思った。

それなら、聴いたことがある音楽をライブハウスで聴くことは未知との遭遇ではないのかというと、もちろんそういうわけでもない。むしろその逆なのではないか。

モーモールルギャバンのゲイリー・ビッチェさんことヤジマXさんは、ライブ中に後藤さんへの思いを語っていた。
15年くらい前に後藤さんにとても感銘を受けたこと、その後藤さんのライブに呼んでもらって演奏していることのありがたさ、自分の声がコンプレックスだったこと――。

ヤジマXさんとわたしが同じ思いを抱いているとか、そういう意味ではないのだけれど、わたしはヤジマXさんの言葉を聴いて、同じく15年くらい前に自分が後藤さんのライブ映像を観てガツンとなにかを深く深くうちこまれたこと、そしてその数年後にモーモールルギャバンのライブ映像を観てゲイリー・ビッチェことヤジマXさんの姿や言葉や音に胸を打たれたこと、初めて後藤さんの音楽にふれてからこれまで、繰り返し後藤さんの音楽を聴いてきたこと、そしてのこの約15年間の自分の人生のことを思い出していた。
そして、そんなヤジマXさんが後藤さんのライブで後藤さんへの思いを紡ぎながら音を奏でていること、そしてそれにわたしが直接ふれている、この奇跡とでも言いたくなるような「未知」の体験に圧倒されていた。
後藤さんはこの日のMCで、人に歴史ありということを言っていた。

パーティのラスト、後藤さんの番。

その時間を思い出し、いまこれを書いているときでさえ手が止まりそうになる。目頭は熱くなりさまざまな感情がどこからかこみあげてくる。
後藤さんの音が、言葉が、頭のなかでよみがえる。
目に映ったものも。
場の空気も。

未知にふれるとき、すなわち一回性の体験のさなかにあるとき、そこには場の力、場力(馬力と区別するために「ばぢから」と読んでみる)のようなものがぶわーっと広がっている気がする。
測定不可能なものを数値化することのだるさ、無粋さを承知で試しに書いてみると、あのときの場力は1~10でいうとおそらく6兆2000億とか、それくらいは余裕で超えていた。

鼓膜に響く圧。
脳の電気信号なんて感知できないはずなのに、脳にガンとなにかがうちこまれて脳がよろこんでいる感覚。
麻薬を使ったことはないけれど、こういう感覚なんだろうかと想像する。
身体が全身でなにかを受け取っている。
全身に、全精神に一度になにかが突き刺さって、それは肌を突き破り、心の殻を突き破り、一度も直接見たことのないわたしの身体の中や心の中で勢いを増してあばれている。
救済、信仰、楽園。
わたしは特定の宗教に信仰心を抱いているわけではないのだけれど、そんな単語がふと浮かんでくる。
すてきな時間。

そうこうしているうちに、パーティは終わってしまった。

ライブで感じた感情を、しあわせを、後藤さんに伝えたかった。
けれど、物販のときにわたしはうまく話せなかった。
音楽からもらったものに対してどう言葉を尽くせばよいのかわからなかった。
そんなようなことをそのまま伝えたら、後藤さんからあまりにもブリリアントな言葉をもらってしまった。
その内容はここには書かないけれど、わたしは家に帰ってパートナーにこの日の出来事や自分の思いを話し、一段落してからギターの練習をした。

対バンのみなさん、そして後藤さん、本当にありがとうございました。

後藤まりこアコースティックviolence POP『未来』リリースツアー《タペタム》@岡山ペパーランのポスター

①19:00 やっほー 
②Theeノリノリサーファーズ
③ヤジマX
④夏生
⑤後藤まりこ

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