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働く人たちを応援する法律コラム

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弁護士@働く人たちを応援する弁護士が作成した労働問題に関する法律コラムを掲載しています。週1ペース更新。職場で悩んでいる方、人事労務に携わる方、企業経営をしている方、労働法に興味…
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2022年3月の記事一覧

マンネリ人事に冷や水を浴びせた裁判例

はじめに日本の多くの企業では基幹的業務を総合職に、補助的業務を一般職に担わせるというコース別人事制度を採用しています。 また、このコース別人事制度の運用に際しては、男性を総合職に、女性を一般職に配属することも多いです。 そのような中、近時、ある意味で典型的なコース別人事制度の運用をしていた企業が法的責任を追及されるという事案が起きました。 今回はそのような裁判例として巴機械サービス事件(横浜地裁令和3年3月23日判決・労判1243号5頁)を紹介します。 事案の概要本件は、被

「人事だから」で済まない降格トラブル

今回は降格トラブルに関する近時の裁判例として広島精研工業事件(広島地裁令3.8.30判決・労判1256号5頁)を取り上げます。 社内での地位の引き下げである降格は、通常、使用者側の人事判断が優先されます。しかし、本事件では珍しく労働者側が勝訴した事案であることから、今回取り上げることにしました。 事案の概要 この事件は、課長職にあった原告が、平成21年10月、業務中に心筋梗塞を患い、平成22年3月1日に復職したものの、平社員に降格されて役付手当もカットされたという事案です

解雇無効の手痛い代償

 解雇が無効となった場合、通常、使用者は、労働者に対し、使用者のもとで勤務できなかった期間についての未払い賃金の精算をしなければなりません(これを通称で「バックペイ」といいます。)。なぜなら、違法な解雇がなければ労働者は勤務先で就労して賃金が得られていたはずだったからです。  なお、解雇期間中に他の所で就労して収入を得ていた場合には、その分だけバックペイは減額されます。ただし、その場合でも平均賃金の6割相当額の賃金は支払わなければならないとされています(曙タクシー事件・最1小