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笠井紀美子 With Gil Evans - Satin Doll(1972)

1972年ギルエヴァンスは菊地雅章さんと共演するため来日します。その際それと同時に当時日本に住んでいたヘレンメリルとの共演が計画されかなり話が進んでいたもののヘレンは日本を出ることになったため代役として笠井紀美子さんとの共演に変更されます。この時のツアー中にスタジオに入り録音するというハードスケジュールだったうえに録音に参加したのはオーケストラからピックアップした9名だけという少しあのサウンドを実現するにはハードルの高そうな状況だったそうですがあの重厚なのに浮遊感のあるホーンアレンジはフルバンドによる名盤達と遜色はありません。

笠井紀美子:ボーカル
ギルエヴァンス:アレンジ、指揮、ピアノ、エレピ
ハンニバルマーヴィンピーターソン:トランペット
ビリーハーパー:テナーサックス、フルート
峰厚介:アルトサックス
宗清洋、福村博:トロンボーン
高柳昌行:ギター
鈴木良雄:ベース
中村よしゆき:ドラム

Day By Day
パーカッションや鈴の音色が幻想的なイントロから始まりホーンが入るとベースのウォーキングベースに合わせてスウィンギーな演奏へと変わり歌もそれに合わせるように変わっていきます。勢いのある伸びやかなボーカルが印象的です。

Poor Buttfly
幻想的な歌い方とエレピが印象的なバラードナンバー。普段は演奏者というより指揮者としての活躍が目立つギルのエレピも印象的です。

Bye Bye Blackbird
スウィンギーな演奏によくあったはつらつとしたボーカルとアルトソロが印象的です。さらに言動もノイズミュージックのような音楽性も怖い高柳昌行さんがクールなリズムギターを弾いています。これはちょっと意外です。

I Fall In Love Easily
重厚ながらも重すぎないギルらしいホーンアレンジが印象的なバラードナンバー。

Satin Doll
ギルらしい雲のようなホーンアレンジと強力なウォーキングベースがかっこいい曲。

I’m Walkin’
ニューオリンズのR&Bシンガーであるファッツドミノの曲。軽快なアップテンポの曲もグルーヴィなジャズロックにアレンジしています。他がスタンダードばかりなだけに誰の提案でこれの演奏をすることになったのか気になります

When Sunny Gets Blue
ウィスパリングボイスのようで少し違う歌い方が印象的なバラードナンバー。

There’ll Never  Be Another You
ハンニバルのソロが印象的なミディアムナンバー。ハンニバルもビリーハーパーもギルがわざわざアメリカから連れてきたということは頼りにされていたからだと思いますが2人とも前衛寄りのプレイヤーで菊地雅章さんとの共作ではカーラブレイの曲を取り上げておりギルのフリーとの不思議な関係が気になります。

Good - Bye
スモールコンボのようなアレンジが印象的な演奏。ホーンセクションの人数が多ければもう少し目立つかなとも思いましたが他の曲やアルバムを聴きかえしてみるとホーンやリズムのアレンジが違うのでおそらくあえてこのようなホーンにしたんだと思います。

コネクション: 菊地雅章withギルエヴァンスオーケストラ
こちらはN響や関西からもメンバーを集めたフルオーケストラの演奏。メンバーが日本人なのはギルからの提案だったそうですがギルの指定した楽器のなかには演奏できるジャズミュージシャンがおらずメンバー集めには苦労し一部はギルに妥協してもらったそうです。50、60年代のクラシックやスペイン音楽的な要素もある音と70年代のフリーやロックの要素を含んだ激しい音の丁度過渡期のようないい演奏ではありますが僕の語彙やセンスでは紹介が難しいのでここで紹介します。