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Horace Silver - Serenade To A Soul Sister(1968)

68年ホレスシルバーは岐路に立っていました。ホレスが得意とするファンキージャズはソウルジャズやジャズファンクに変化し電気的楽器を導入とアドリブの短縮が進みました。一方かつていた主流派は全てを破壊するフリーの嵐が吹き荒れ、その嵐に身を任せる者、モードの導入を行いほど新たな主流を作り出さんとする者、避難所を求めヨーロッパや故郷に身を移す者に分かれていました。ホレスはこれに対して一応の答を3つこのアルバムで出しました。一番はエレクトリックベースを導入した8ビートのファンキーなナンバー。(ノリのいいジャズ)、2番は自分と似たスタイルのミュージシャンとの今まで通りのファンキージャズ(ノリのいいジャズ)、3番はモードに理解のある若いミュージシャンとのモードジャズ(主流派)。あまり評価されず数あるアルバムに埋もれてしまっていますが代表作に引けを取らない一枚です。

メンバー
ホレスシルバー:ピアノ
チャールズトリバー:トランペット

1〜3のみ参加
スタンリータレンタイン:テナーサックス
ボブクランショウ:エレベ(1)ベース(2、3)
ミッキーローカー:ドラム

4〜6
ベニーモウピン:テナーサックス
ジョンウィリアムス:ベース
ビリーコブハム:ドラム、ジャケット写真撮影

Psychedelic Sally
サイケデリックとありますが音はサイケではなくボブクランショウのエレベのファンキーなグルーヴが印象的なソウルジャズナンバー。リズミカルで躍動感のあるアドリブも小難しさとは真逆でドラムもバーナードパーディのごとき演奏。当時サイケデリックは流行に乗ってかっこいいみたいなニュアンスのスラングとして用いられていたそうです。ラムゼイルイスとかインストのR&Bとかスカなんかと混ぜて流したらモッズが喜んで踊り出しそうな一曲です。

Serenade To A Soul Sister
一曲目に比べると古風なファンキージャズです。ただホーンのアドリブはモーダルな質感もあって試行錯誤が伺えます。

Rain Dance
打楽器のようなピアノが印象的なテーマの曲。ここだけは異質な印象を受けますがアドリブパートはホレスらしいタッチでタレンタインのサックスも当時としてはやや時代遅れなハードバップ的なトーンです。

Jungle Juice
モーダルながらもほんのりファンキーな曲。ベニーモウピンのしなやかさとウネウネしたトーンを織り交ぜたソロが印象的です。

Kindred Spirits
ミステリアスなテーマのミディアムナンバー。チャールズトリバーの個性的なトランペットが印象的です。

Next Time I Fall In Love
ピアノトリオによるリリカルなバラードナンバー。ビリーコブハムというとアグレッシブなドラミングが特徴ですがこのアルバムではそこまで個性を感じられませんが成長の途中だったような技術不足もあまり感じられません。後の演奏は基本のうえに成り立っている演奏だとわかって興味深いです。

コネクション:ビリーコブハムの初レコーディング
クレジットが残っている中で最も古い録音はGeorge BensonのGiblet Gravyで1968年の2月(日は不明)で本作が同年の3月29日(つまり投稿日の56年前)です。ボブクランショウも参加したこのアルバムはプレステッジやブルースで有名なチェスのサブレーベルのアーゴにいたエズモンドエドワーズがプロデュースを手掛けています。この頃の彼はブルーノート以外のソウルジャズのほぼ全てを手掛けていたといっても過言ではないくらいのソウルマン。これもファンキーでいいようですがまだ聴いたことはありません。