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Nick DeCaro - Italian Graffiti(1974)

AORの始祖と言われる本作ですが個人的にはソウルやジャズ(の経験も豊かなフュージョン)系のミュージシャンを起用してもっと前のポップロックやそれより前のポップスの雰囲気もある繊細な本作が70s後半から80年代のジャズの経験のないロックやフュージョン系ミュージシャンを起用した対象年齢高め?のロックや大味なバラードとどう結びつくのかわからないです。でも本作の持つ豊かな音楽性、しなやかなリズム、柔らかいアレンジ、確かな人選等は細かいジャンル分けを超えた良さを持っています。多くのポップスでアレンジを行なってきたニックデカロとプロデュースをしてきたトミーリピューマ。2人とも古いジャズやポップスを愛すると同時に常に最先端の音楽にも携わってきました。そんな2人だからこそ作れたサウンドです。さらにライナーにはニックのコメントが書かれていてこのアルバムと音楽そのものへの愛情と人柄の良さが感じられていいです。

メンバー
ニックデカロ、トミーリピューマ:ボーカル、コーラス、キーボード
アーサーアダムズ、デイヴィッドTウォーカー:ギター
ウィルトンフェルダー、マックスベネット(5):エレベ
トニーオルテガ:ウッドベース(3)
ポールハンフリー、ハーヴィメイソン:ドラム
バドシャンク:フルート(3、5)、アルトサックス(6)
プラスジョンソン:アルトサックス(9)

Under The Jamaican Moon
スティーブンビショップとリアカンケルの曲。デヴィTとストリングスの柔らかいトーンとソフトな声がよくあっています。

Hppier Than Morning Sun
スティービーワンダーのカバー。柔らかくもコシのあるビートはドラムがハーヴィメイソン、ベースがウィルトンフェルダーです。中盤のフルートソロはクールジャズ時代から活躍するリード奏者のバドシャンク。西海岸的なコーラスも入り西海岸の豊かな音楽を一曲に上手くまとめています。

Tea For Two
ブロッサムディアリーを始め多くのジャズミュージシャンが取り上げてきたスタンダードナンバーです。本格的なジャズの演奏ですがゴージャスなストリングスやコーラスはソフトロックのそれです。ニックが古い曲をやりたいと思って30,40年代の曲がいろいろトミーに聴かせて一番気に入ったのがこの曲だったとか。ライナーでは気に入っている曲だからみんなにも気に入ってもらえるとうれしいと書いています。

All I Want
ジョニミッチェルのブルーより。このアルバムで一番初めに録音された曲でボサノヴァ風のドラムにソウルのベースを合わせたリズムが面白いです。

Wailing Wall
トッドラングレンの曲。マックスベネットのウッドベースのようなエレベがガッチリと底を支えその上ではニックのキーボードとコーラスが漂うようにメロディを作りそこにピッタリ寄り添うようなリードボーカルとフルートが乗る構成がとても美しいです。

Angie Girl
スティービーワンダーの曲。ニックの大好きな曲でナイトクラブでよく演奏していていつかボーカルアルバムを作るならこれを演奏しようと思っていたそうです。イントロのデヴィTの甘いギターだけでも満足なのにその後も美しい演奏が続きバドのアルトソロまで入るのだから最高です。

Getting Migty Crowdy
ベティエヴァレットのカバーで書いたのはヴァンマッコイ。アップテンポでホーンセクションが入ったいい意味で甘さのないグルーヴィな曲です。

Wilhle City Sleeping
ランディニューマンが若い頃に書いた曲で社会的な詩を書くSSWになる前の曲でロマンチックな歌詞とメロディが印象的です。この曲もいつか録音しようとニックが温めていた曲でほんのりラテン調のリズムとハープのドリーミーな音色が印象的です。

Canned Music
ダンヒックスの曲。アナログシンセやワウギター(ソロはアーサーアダムズ)、女声コーラスと少し他とは違うアレンジがされています。アルトソロはプラスジョンソン。ビッグバンドジャズからエキゾチカサウンド、サーフロック、ソウルにルーツロックまで多くのミュージシャンの録音に参加してきた人です。

Tapestry
元々はジェニファーウォーンズのためにアレンジしたもので気に入ったものの成功はしなかったのでセルフカバーしたそうです。西海岸のサイケが混じったソフトロックをもと柔らかくしたようなアレンジです。