見出し画像

『静かな人の戦略書』体験記

私は内向型。知らない人だらけの環境では、
ずっと黙っている。
人前で話すのが大の苦手で、
機会からは極力逃げてきた。

これは変えられる性質のものではないと
思っていて、外向型になろうと努力した・・・ことはない。

ひとりで過ごす時間が好きで、旅も最近は
ひとりが圧倒的に多い。
事前に旅程を細かに決めることはせず、
その地で感じる空気感を全身で味わって、
同じ場所から動かなかったり、
さっさと移動したり。

この本のタイトルを見て、私は内向型を
克服した人の記録だと思った。
外向型に憧れを抱く人は、おそらく
私だけではないだろう。
自分の意見を、気負うことなく
自然に口に出し、
人が集まって楽しそうな輪ができて、
そして、華やかにキラキラ光っているように
見えるからだ。

表紙を開いて読み始めてすぐに、
私は違和感を感じた。
著者ジル・チャン氏の華麗な経歴に、だ。
この人、本当に内向型?

内向型ってなに?

確かに、無口で恥ずかしがり屋で、
成功していると思われている今でも
なかなか思いを言葉で伝えることが
できなかったと書かれている。

しかし、全米のプロスポーツの
マーケティングなど、外向型の聖地のような
ポジションで活躍する様子は、
内向型には縁のない世界、だと思っていた。

たとえ、人前で話す時に今でも
緊張するとしたら、内向型のかけらが
若干残っているという程度で、
著者はすでに内向型から脱出している
のではないだろうか?

著者な序文でこんなことを述べている。

内向型の人はアイディアや野心を持っていないというわけではなく、夢を追うのにいちいち騒がないだけだ。

「静かな人の戦略書」 p.5

そうかもしれない。
でも、私の疑問は晴れない。
そうだけど、そうかもしれないけど、
野心にも外向的な人が好む野心と
内向的な人が好む野心があって、
外向的ど真ん中な野心を持って、
そのステージの真ん中に立つ人は
本当に内向的なのだろうか?

これは、相当に強い私のコンプレックスの現れなんだろう。
人前で話さなければならない気配を感じると、全速力で逃げてきた。


何だかなーという思いが晴れないまま、
サラッと読み進めた。
最後に本を閉じて、それでも
スッキリしなかった。
しかし、本の帯にこんな文字が踊っている。
「話題沸騰 10万部突破!」

その時に、目が留まったのが
『戦略書』という言葉だった。
目指しているものや手に入れたいものが
どんなものかは関係ない。
外向型を目指す内向型の指南書ではない。

序文を読みかえしてみたら、
こんな言葉があった。

内向型であっても、外向型であっても、自分の個性を大切にして、安全地帯(コンフォートゾーン)から一歩踏み出すこと。他人にはられたレッテルのせいで、自分の可能性を狭めてはいけないこと。この本でいちばん伝えたいのは、そういうことだ。

「静かな人の戦略書」 p.6

なんだ、いちばん大切なメッセージが
序文にあるじゃないか。
私はこの、大切なメッセージを
ちゃんと読んでいなかったのだ。

著者さん、ごめんなさい。

コンフォートゾーンから抜け出す

コンフォートゾーン(安全地帯)はこんなふうに説明されている。

コンフォートゾーン(英語:Comfort zone)とは、「快適な空間」を意味する語である。心理学などでは、ストレスや不安が無く、限りなく落ち着いた精神状態でいられる場所を指す。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/コンフォートゾーン

あえて外向型になろうとするのではなく、
なる必要もない。
本書では「得策ではない」と書かれている。
ただ、潜在的に自分が選んだ安全地帯に
身をひそめていただけでは、
何も変わらないし、おそらく
手に入れたいものに近づくこともできない。

そういえば、「Stepping out of your comfort zone」
という研修を受けたことがある。外部講師を招いて、
豪シドニー郊外のアスレチック公園で
いろいろなコトをやらされた。
「そこから一歩踏み出せ!仲間を信じろ!」
コンフォートゾーンと聞くと、
この時の光景が蘇ってくる。

内向型にとっては、仕事は自分の安全地帯から踏み出すための格好の理由だった、ってわけだ

「静かな人の戦略書」 p.130

これで、私のとっての本書の意味が
大きく変わった。
私は最初の読みでいったい何を
読んだのだろう。。。
でも、最後まで消えなかったモヤモヤが
再読を促し、
その結果、私は誤読に気がついた。
よかった、よかった(汗)

賢者の戦略

落ち着いて読み返してみた。
内向型が苦手とする場面のヒントが
いくつも書かれているが、
どれも目新しいものではない。

自分の思考・行動パターンを知って、
丁寧に対応しようということだと思う。
テクニックに頼ったり力づくで
強行突破する必要はない。

「内向型の特徴を活かして、
 慎重に。
 冷静に。
 謙虚に。
 状況をよく観察して、
 入念に準備せよ」

状況によっては人前に出てしまった方が、
その後、自分を楽にすることが
できるかもしれない。
例えば、イベントで簡単なスピーチを
することで、多くの知らない人への
自己紹介をスキップすることができるとか。

多くの人に囲まれるとか、場所を移動する
ということに敏感で、疲れを感じやすい。
無駄なエネルギーの消耗は極力避け、
自分というリソースの使い方・活かし方を
考える。

新しい場所では、いつでも逃げ込める場所を、まず確認する。

などなど。

内向型は、まず口が出る・・・ということは多分ない。
もしくは少ない。
人の話を聞き、状況を静観し、自分の性質を考えて、
ちゃんと準備をする。

私自身はというと、「うっかり」が多く、
入念な準備も得意ではないのだが、
(本当に内向型???と言われそうだけど)
この本のいちばんのTake away として
しっかり意識していこうと思う。

静かな人、内向型というと、スーザン・ケインの著書が先に世に出て
話題を巻き起こした。
こちらはこれから読もうと思う。
すでに文庫になっていた。

ということで、完全な私の勘違いで始まった読書。
しかし、この勘違いで、この本の真のメッセージに
近づけたような気がする。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?