オタク借金街道④ 〜4年前前半〜

4年前、4月
新しい職場で働くことになった。
「最初はアルバイト」これは聞いていた話だった。東京のアルバイトでも時給を考えると、田舎の役所よりいい給料がもらえる。単純計算で了承した。ただ、次の一言は聞いていなかった。
「まだ慣れていないからお仕事はそんなに渡せないけどいいかな?」
いや、聞いていない。
つまり、彼女が言うには月に数回アルバイトとしてお仕事をしてほしいということだった。
都会ではこれが当たり前のことなんだろうか。だからフリーターが沢山いるのか。
twitterで余裕ぶっていたこともあり、もっと仕事が欲しいなんて言えず「大丈夫だよ」と返してしまった。
このとき、引越し代など惜しまずに実家に帰れば良かった。
すぐに沢山の面接を受けた。単発バイトは ほとんど落ちた。
詳細は書けないが、奴隷のような仕事もした。単発だからこそ、名前も知らない人に心無いことをたくさん言われた。
「世の中にはこんな仕事があるのか」と、数ヶ月前まで役所でのんびり働いていた自分と比較してしまった。とても悔しかった。

昨年の5月にtwitterを勧めてきた友人が東京へ遊びに来たので会うことにした。
新しい生活は楽しいと嘘をつきながら、友人が行きたいと言ったお高めのカフェでまったりした。
そして共通の話題となるソシャゲの話になる。
「このゲームさー。課金したら出るんだよねー」
その一声で親指一つで5000円ほどのお金を飛ばす友人を見て驚いた。
課金ってこんなに気軽なものなのか。

実は私、ここまで無課金であった。

帰宅して、出ないガチャにイライラして、初めての課金をしてしまった。
課金してすぐに欲しいカードは出てきた。

5月
田舎にいた頃に比べて、出費はたくさんあった。
主に課金とフォロワとの交際費とグッズ代だった。
グッズは個人で買いに行くことはほとんどなく、コラボカフェやアニメショップに行った際に、フォロワーが買うと一緒に買わないといけない気がして買っていた。
それでもこの頃はカードで支払っていても、翌月にはちゃんと返済ができていた。
UPする画像に付く沢山のいいねを見て、グルメアカウントかというくらい色んなお店へ行った。
インスタ映えという言葉をバカにはできなかった。自分もtwitterに映えるために色んなお店へ行っていた。
仲のよかったフォロワーたちとはリアルに何度か会うこともあった。
その度に「オタクっぽくない」と言われることが褒め言葉と捉えていた。
会話でよく
「二次絵描いている人ってってブス多いよね」
「イベントで巨体がいた」
「カバンも靴もボロボロ」
「◯◯推しってこんな人って思われたくなくって、容姿には気遣っている」
などという会話があった。3ヶ月前まで芋女だった私には厳しい言葉だった。
オタク女子集団はルッキズムの呪いが他の女子グループに比べて非常に強い気がする。
この頃はそれに気付かず「ああ、次にこの人たちと会うときの服とカバンを買わなくちゃ」という脳内になった。
週に2〜3回は誰かと会っていたので、金銭の負担はすごくあったが、楽しかった。

6月
毎月のカードの返済は10〜20万近くあった。家賃光熱費などを入れると、毎月の生活に20〜30万必要なことになる。
もしかしたらここを見ている人で、30万なんて少ないと捉える人もいると思う。
おそらく、この頃の私の周りにいた人がみんなそのタイプだったのだろう。
当時、まともな仕事もなかった私は、月に稼げて精々15万程度だった。
引っ越して来て3ヶ月、貯金は底をつきはじめていた。

田舎に住んでいた頃、あまりにも暇で、広告に出てくる漫画の続きが気になるからと買うことがあった。
その漫画のひとつ、女子が転落していく様子が面白おかしく描かれた漫画があった。
この頃くらいまでは何も考えずに読んでいたが、完全に自分と一致である。
その主人公がお金がなく、あっさり消費者金融で借りられる様子が描かれていたことを覚えている。
そうだ、お金を借りよう。
私はプ◯ミスに電話をしたが、定職に付いていないということもあり、もちろん審査は落ちた。
いい加減就職しないとまずいと思い始めたところだったが、8月の同人イベントの原稿のこともあり、就職活動は疎かだった。
初めてのイベント参加となるので新刊を落とすこともできない。
就職はこのイベントが終わってからでいいやと思い、原稿重視の生活となった。
住民税や保険料の請求が来たが、大した額ではなかったので一括で払った。

7月
ほぼ働かずに原稿漬けの1ヶ月だった。
お金は幸いにもバイト先に「今月厳しいんですぅ」と言って仕事を増やしてもらった。
日給換算すると日給2〜3万の仕事だった。好きな仕事でしっかりお金をもらえて、原稿もできるなんて最高だった。まだこの生活でいいやと思ってしまっていた。
この頃、月々の返済は後から分割にすることができると知った。
高額なものは全て24回払いに変更した。
こうすることで毎月の支払いが4万程に抑えられた。
同人誌の印刷費も24回払いにした。

8月
初めての同人イベントに参加をした。
予想以上の反響で、正直なところとても嬉しかった。東京に出てきてよかったと思えた。
アフターは普段会えない同じカプの人たちとそこそこいいお店で夜通し飲んだ。
これが大人の飲み会なんだ、そう思った。
半年前まで田舎のファミレスで22時までドリンクバーで楽しんでいた自分とは別人の気分だった。
幹事だったので、会計をカードで済ませ、後に分割することにした。
今思えば、これはただの現金化だ。


4年前後半へ続く