オタク借金街道⑨ 〜2年前後半〜

1月
フォロワー同士の飲み会で、あるフォロワーが「今月夜勤多く入れちゃってさ〜」と言ってきた。
医療福祉関係の方かなと思い、前職のこともあり「この季節は嫌だよねー」と言うと「え、副業のキャバだよ」と返された。
私はこの時点でやっと知った。華やかなフォロワーは、みんな、副業をしている。
ときどき、twittetにUPされる華やかな料理や豪華な鞄、全て納得がいった。
そして自身も、華やかさを出す為に夜の仕事へ応募をした。
ことごとく面接は落ちた。
そりゃそうだ。いくら田舎の芋女から一般都民になったとしても、華やかな世界の人間ではないのだ。
なんとか拾ってくれたところは家からものすごく近いスナックとクラブとガールズバーだった。
キャバは全滅だった。
スナックは家から近すぎることと時給が最初は1200円ということもあり、出勤することなく断った。
クラブはチーママがとにかく厳しかった。
翌日に朝からイベントがあった日、あまり深夜まで働きたくないことを伝えると
「何で? お客さんもいないくせに」「入ってきた月によく言えるね」
「その靴、合っていないよね?」ヘルプも回ってこず、ずっとスーツを着て掃除だけしていた。
人と話すことは得意分野だと思っていた。とんだ勘違いだった。
ボロカスだった。悔しくて泣きながら帰ったこともあった。
ガールズバーの方はノルマも少なく続けられると思った。
寒空の下、深夜2時まで店前に立ち、翌日9時には居酒屋のランチ準備に出勤した。
時給1500円で日払い3000円、バックや手当など含めると、毎月5万ほどお小遣いになった。
日払いの3000円を生活費にして、給与の1万円は課金していいと決めていた。
残りは返済に使った。
クラブは体力が持たず、3日で辞めてしまった。
今まで働いた中で辛かった仕事ベスト3に入る。
キャバ嬢をとても尊敬する。

2月
空いた時間を使い、無料の法律事務所へ相談することにした。
とても親身に聞いてくださり、思わず涙が出てしまった。会ったこともない人に、自分の生い立ちまで話してしまった。
後出しなのだが、私は実家暮らしのときに母に内緒で別居している父親に100万円ほど貸している。
学費を出してもらったので身内の奨学金と思い、もう、返ってこないものだと思っている。
母も知らない、そんなことまで話してしまった。
「もし、そのお金が返ってきたときは、あなたが好きなように使いなさい」
「これから何があるのかわからないんですよ」
こんなクズにもこんなに優しい言葉をかけてくださるのか。
電話しながら何度も泣いた。
債務整理をする決意をした。
「書類を送りますので、今月の支払いはしないでください」
「M社から借りているので、M銀行が凍結するかもしれません。お金を引き出しておいてください」
言われるがまま、口座から全財産を抜き取った。と言っても大した額ではないのだが、ガルバとデザインの給与も現金払いということもあり、家に多額の現金を持つことになる。
多額と言っても10万ほどだが、それが全て盗まれてしまった全財産失うことになる。
怖くて昔使っていた地方銀行に預けることにした。
書類は届いたけれども、3月のイベントの原稿があったため後回しにした。

3月
居酒屋に知らない人から私宛に電話が入った。
F社への返済は口座引き落としにしていたため、残高ゼロの口座から引き落としはできず、督促の電話だった。
督促の電話は会社名は名乗らず「Aと申しますが◯◯さんいらっしゃいますか」という内容で掛かってくる。カードを作った時の本人確認のようなものだ。
ちょうどガルバで飲み過ぎて昼から吐いていたときだった。
幸い出た者が同年代のフリーターだったため
「スマホどこですか! 早く迎えに来てもらってください」と心配された。体調不良を心配した彼氏と勘違いされている。
居酒屋には申し訳ないが、この日は早退させてもらい、帰宅して電話することにした。
F社へは振込でも対応できたので、振込で返済することにした。
また、F社の引き落としは25日のため、口座には8000円残すことにした。
コンビニのバイトを辞めてしまったのでわからないのだが、もしかしたらずっと督促の電話が鳴っているのかもしれない。
この月のイベントはスムーズに終わったが、初めて同人誌代を全額一括で支払うことをした。
とても苦しかったのでこの月は課金を辞めた。
デザインの仕事も大掛かりなものすらなくなり、また、最初に紹介してくれたフォロワーと疎遠になりたいこともあり、退職した。


1年前に続く