内情

 泣きたくても泣けなかった時に涙をくれたあの人は、今でも私にこびりついていた。少しくらいは成長できたかと思っていたのも幻想で、縋っているものは変わらなくて、申し訳程度に大きくなったのは体ひとつ。珍しく信じてみようなんて思うから苦しむ羽目になる訳で、最初から期待なんてしちゃいけないってとっくに知っていたのに。

 自分が社会不適合者であることとか、もう昔から知っているよ。だけど私の目に普通に映っている人も同じようなことで思い詰めているのかもしれない。私が私を諦めたり許したりするのが甘えだとしても、それが悪いなんて思えない。やっぱり他人なんて嫌いだし、自分のことさえも信じられない。

 やっとちゃんと泣けたって、寝て起きた時の目の腫れを予知しているから、涙が枯れたあともずっと悲しい。せめて夢の中では柔らかい空気に包まれていたいけれど、それだって総量が決まっていて他人との取り合いなのだとしたら、もう何も望むことはできない。

 仕方がないからイヤホンを耳にぶっ刺して、爆音でかけた下らない曲に、救われたなんて認めたくない。欲しかった言葉、彼らから貰えるのは私が彼らを選び取ったから。13日の金曜日が不穏なのは別にジェイソンのせいでもなんでもない。ただこの世の不条理と自分の不甲斐なさのせいだ。

 楽に生きたいと願うのはそれほど罪なことかしら。私のまま生きていたいと思うのはそんなにおかしなことかしら。他人のそれを認めてもこの私は許されなかった。私は私のことを愛して認めてあやして慰め続けているけれど、たまに息が苦しくなって、時々心が壊れてしまう。助けて頂戴、なんて嘘。生かしておいてくれさえいれば。それでいいから、ごめん許して。

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