狭心症候群

 生きてきて気がついたことがある。世界は想像よりもあまりに狭い。だけど僕の心よりは広い。平均よりかは広い僕の心よりも。そして世間の心は狭い。狭くて狭くて真っ暗で、カバーのないマットレスを敷いただけの四畳半の和室に言い訳みたいに備え付けてある押し入れのよう。だから怖い。それなのに誰も優しくしてくれないし守ってもくれない。

 愛とか情とか義理とかそういう曖昧なものにちゃんと数値や価格があるならよかった。それならいっそ、増税前に買い込んでひとりじめだってできたかもしれない。はした金しか持っちゃいないけど。曖昧な僕の価値が可視ならよかった。それなら安心して死んだり生き返ったりしてみるのに。僕に大した価値なんてないのは明らかなのに、バカな僕には証明もできないから、生き続けている。流石にもう飽きたなぁ。もっとちゃんと勉強しておけばよかったのかな。そう思うなら今からだってすればいいのに。本当に知りたいことは学校では教えてくれないってあれ、本当かな。学校、嫌いだったから真相はわからない。本当に知りたいことはなんなのだろう。ああ、何がわからないのかさえわからない。純粋な煩悩なら僕の体を蝕んでくれ。

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