流転

 私立百合ケ丘学園。私はこの学園の幼稚舎で日語を教えています。いつか百合ケ丘国家が日本国家に取って代わったときに使われる言語。それを子どもたちに教えています。いち早く日語を覚えたこの子たちは後に、多くの日本人に日語を教えてくれることでしょう。

 首謀者は誰だ、どうやって日本を征服するつもりだ？なんだかあなたの仰ることはあまり穏やかじゃありませんね。首謀者なんていませんよ。関わっている全員が我が百合ケ丘に誇りをもっていますから。指揮は学園長が取ってくださっていますけど。それに征服だなんて、怖い言葉をお使いになられるのですね。私たちはただ、甘くて美味しい飴玉を、日本国民に配り続けるのみなのですよ。それだけです。後は、この学園の、いえ我が国の、一員になりたいと思ったならなればいい。ただそれだけのことです。

 お前も目を覚ましたらどうだなんて、あなたに言われる筋合いがありますか？俺が悪かった？父親？私には親なんて初めからありませんでしたから。大地と我が国だけがその親とやらに似た何かでしたから。だから頭をお上げになって。あなた様に謝られる義理なんて到底御座いませんもの。

 もういい勝手にしろなんて、干渉もいいところですわ。あなたに何があったのか些か存じ上げませんが、日本なんかにいるからダメなのですよ、きっと。どうですか是非我が国へ。あっ、飴玉食べますか？美味しいんですよ、これ。とてもとても甘くて。ん？ひとつ土産に持って帰ろう？ダメじゃないですか、そんなこと仰っては。ここで得た飴はここで溶かすのです。ほら、こうやって、丸呑みも粋ですよ。どうです？ほら、ここでなら幾つでも。だから隠して持ち帰ろうとなんてなさらないで。ああ、日本語通じねぇのか。それなら言葉を覚えさせるには丁度いいな？いやでもお前はこの国には要らねぇわ。クソ邪魔くせぇ。マジ死ねよ。よくもまぁ今更堂々と面下げて。殺されてぇのかクソジジイ。

 皆さん今日もお勉強、よくがんばりました。さて、給食をしっかり食べて、お昼寝の時間はたっぷり寝ましょうね。すくすくと育つように。