相反

 「昔書いたどうでもいい物語たちを、ぐっちゃぐちゃに丸めて呑み込んだらね、」

「うん、苦かった?」

「ううん。想像以上に甘かった。噛んでもいないのに歯に挟まって、そのうち出汁まで出てきちゃって」「捨てられそうになったときだけ素直なんだなって」「可愛いというか、あざとくって、まるで自分を見ているみたいで」「泣いてしまいそうになった」

「泣かなかったんだ?」

「うん。一人の時に泣くの、なんだか勿体ないなって思って」

「そっか」

「だから。だから、泣いていいかな?」

「いいよ」「生命ある今日を祝して?」

「そう。決して終わらない今を呪って」

「じゃあ僕は君の代わりに笑っておこうかな」

「あら、悪趣味ね」

「お互い様」

「そうね。お生憎様」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?