自認不感症

 やっと見つけた君を離したくないなんてエゴだ。愛に形はないと聞いたがあれだってどうせ嘘だ。ただ限りなく透明に近いせいで、数多の目には映らない。おいしいものを食べたときに誰かの顔が思い浮かぶようなこの上ない幸せが未だわからずに、二の足を踏み、二の腕は垂れ下がり、好きだったことを認めることすら馬鹿らしい。空腹はいつだって認めるに足りないし、満腹は実は物凄く不満足だ。ほかの欲求が湧き出てきても、ここは泉かよ。なんて言える相手もいないんじゃあな。どうしよう?なんて誰にも聞けないどうしようもない日々の狭間で君との記憶だけを頼りに、森を歩いては泥濘に溺れる。足をばたつかせ始めてからどれほど経つだろう。こうしているだけで海やプールが歩み寄ってきてくれればいいのに。夏のバカ。転嫁する奴はもっと馬鹿。あーあ、お腹空いたなぁ。

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