あなたが藁であるとしても

 電車の広告に現れる安い女よりも安くて、女であることにも大して価値がない。スタイルが平均値よりいいからといって誰に好かれるでもなければ誰かを愛することもない。こうして捲し立てるとなんだか愁いの怪物みたい。でもそうね、ちょうどいいかもね。この涼しくなった時期に愁うのは。物悲しさと秋の味覚による満腹の共同作業ね。なんて、今日も気の利いたことは言わなくていい?

 そのために、足は向かう。私が私たるために、あなたのワガママだけを聴きたい。耳を澄まして聞こえたのは、大きな足音と誰かの啜り泣く声。こうやって皆が世界に産み落とした何かを私は気体と一緒に吸って、こんなに大きくなりました。だからってその負荷に耐えられる術もない。いつも首は痛むし、肩だって凝る。なんだかまるで生贄みたい。そういえば、やたら生贄を題材にしたがる村の掟系の映画は、パッケージが最大限の面白みだったりするものだよな。それにがっかりする余裕のある夜と、少しでも期待した私に謝ってほしい。違う、あなたに言っているんじゃなくて、月に言っているんだよ。今日は生憎の曇天だな。それどころか雨だって降っている。第一、今はまだ夕時。

 あなたのもとへ向かう足を、今さら止めるつもりもない。ならいっそ、偶には溺れてみればいい?

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