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酔い

‪ それっぽい話をするときに必ず「母数」という言葉を使う語彙の母数に乏しい上司に、いやらしい目で見られている。私は嫌悪感と非物理的快楽を天秤にかける。そうして彼と夜を共に、いや、正確にいうと、いつも私たちは昼で済ませるのだった。彼の首の裏の脂とパートナーにつけられた爪痕を丁寧に拭いた私の手。執拗に消毒する私に彼は、何を見ているのだろう。私は彼ら男を下にみていた。そうでなければ目の前で股なんか開かない。消さないと知っていながら、電気を消してと頬を染めたりもしない。こういう日の晩はいつも缶のお酒を買って帰る。爪を上から覗くと、今までに脚を開いた相手たちが詰まっているように見えた。かといって爪の垢なんてツマミにはならない。夜は因縁、空きっ腹に酒。‬

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