夢遊

 先日見た夢と一年位前に見た夢が繋がっていたから、寝てみる夢の話ね。だから覚えているうちに書き留めておこうと思ったの。でももう覚めて数日経ってしまったから、思い出せなかった。起きたときは確かくっきりと、温度までも憶えていたはずなのに。兎に角最近はある程度睡眠時間が増えて、その分浅はかな眠りも増えて、夢をみることも多くなった。いつかの夢と夢が繋がっていることも多くあって、そこにはパラレルな世界が存在するのだろうと思った。だから、睡眠時間が短くなると世界が歪んでしまうのだろう。あるべき世界の時間を奪ってしまうから。
 それでも、今でも、私は寝るのがあまり得意ではない。酒を飲んでも酔いを回さないように、夢見時の自分の無意識をも恐れているのだろう。長時間寝ると嫌な夢を見てしまうのも寝不精の要因の一つだった。夢のなかの、他人である自分が、現実の自分である私の不幸を担ってくれているのだとしたら礼を言うべきなのかもしれないが。でも苦手なものはそうなのだから仕方がない。
 私は、私ではない私を、俗に並行世界のとでも言えるのだろうか、つまり無意識化にいる自分を壊すことで、意識下にいる私の生を大きくしようとしているのかもしれない。生きたいという強い願いを、他者を押し殺して排除することで叶えようとしているのかもしれない。それがもっと明確な他者なら、私は躊躇しただろう。天邪鬼だから。と言いたいところだが正確には、排除まで至らないと言える。どうせ完全なる他人には多少以上の興味は抱けないから。
 だがしかし、無意識の自分を小さくして何になるというのだろう。実際に壊してしまうことなんて出来ないし、人を殺めてしまうとか、致命的な部分がない限りそのままあり続けていいものだ。それに、夢遊癖でもない限り、睡眠時のそれなんて皆に存在するものなのだから。無意識を殺したがっているのはきっと、私の尊大なる自意識だ。その鋭利な欠片が、チクチクと私の無意識を刺しているらしい。馬鹿らしい。本当に小さくすべきは、この膨張した自意識なのにね。
不幸だけを私に分けて幸福はひた隠しにする君。まあでもお互い様ね。私を小さくしようとしている恐ろしい君。ねえ、あなたも天邪鬼?いつか仲良くなれるかしら。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?