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いつか愛した誰かの姿を鏡に探し続けるなんて

 キラキラした音楽が好きだった。そこに皮肉や愛、故の憎しみがこもっていても、弾けるようにぱあっと光る、そんな音楽を愛してた。
醜い感情も全部、表現してくれる小説や、お笑いが好きだった。自分の暗い感情と向き合って乗り越えていけたし、苦しい過去だって笑い飛ばせた。

 ずっと光りたいと思っていた。だけど光り方なんて知らない。磨き方だって知らないから、私は頑張れないままだ。それでもずっと前から、生きていることには価値があるから、だから胸の奥は苦しい。寂しくも悲しくもなれないから、息が詰まる。痛くても手を伸ばせない。それでも触れ合わないあなたは、世界は、ずっと不変で私に愛されたままだった。嫌ってみたって笑ったままだった。私の思いなんて一生伝わらないから、安心できたし嬉しかった。

 紙に書く文章、パソコンに打ち込んだ言葉、スマホのメモの殴り書き。全部少しづつ違っていて、それでも全部私のままで、全部私なんかじゃあなくって。だから泣きそうになった。涙も声も出ないのに、泣きたいと思った。意味もなくただ、泣いていたいと思った。

 君の悲しみが、その一過性の苦しみが、いつも私には煌めいてみえたから。君の笑顔が、あの口癖が、時には残酷にみえたから。だからこれまで生きようと思った。だからこれからも生きたいと思えた。

 愛してる。なんて嘘だけど、大嫌いだけど愛してる。だからねお願い私の名前を、これからもずっと、呼ばないで。

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