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 寒さを仰いで目に溜まった水はただの生理現象でしかないから、色も味もなくてただ、残るのは私の遺伝子情報だけだ。お昼時に食べたよくわからないお菓子の名前にも、今や興味をなくしてしまった。生きているだけで美しいとか、いくら聞いてもデタラメなのは、希死念慮とかに縋れる程に、他者を信じていないからだ。

なんとなくで思い出したあの曲も、好きにも嫌いにもなれなかった同級生の名前も、忘れられていたら過去にすらならなかった。私の過去に加担できておめでとうと言う高慢さと、あらま残念でしたねと卑下する面倒さの、そのどちらともこの体には残っていない。電車で大声で話すサラリーマンが、マスクと換気で正義を殺めたなら、私は社会に中指を立て続けなければいけないのかしら。悪者探しに興味もないのに嫌な人を見つけて苛立ってしまう性分でも、他者に迷惑をかけずに生きづらいだけで済んでいるうちは、まだ大丈夫、なのだと思う。

 他人の不幸も自己否定も同じくらいに無味無臭だけど、前者のほうが少しだけ汚れている気がするし、後者のほうが多分本当は薄汚れている。私の戯言ももしかしたら冴えないうちが華なのかもね。なんて道化。

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