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心残り

 頼んでもいないのに毎朝迎えに来るの。私は誰にも必要となんてされたくないのに。誰も縛らないその代わりに、誰にも縛られたくはない。誰にも愛されないのなら同等に、誰も愛したくなんてない。

 毎日毎日同じことばかりに頭を悩ませて、寝ても覚めてもそれは付き纏って、私を放っておいてはくれない。私はもしかしたらこのもやもやとした薄黒いうねりに愛されてしまったのかもしれない。それはいつか好きになったあの歌の性質によく似ている。いくら目を洗ったって擦ったってうねりはいなくなってくれない。この眼球を潰したってきっと、この渦は消えることはない。

 こんなに暗い文章を書いているのに、本当の私には感情がない。愛情も人情も愛される義理もなくて、つまりは風情とやらもない。ぽっかりとしている胸に唯一、言い訳みたいにみっともなく垂れ落ちる乳房。揉ませる相手もいないからと自分で掴んでみたって、ただそれは感触のいいだけの、脂肪の塊でしかないから骨が笑う。

 さようなら。口に出してみたけれど、私の声は音になる前に白い壁に吸い取られてしまう。そのままずっと言ってみたかった言葉をいっぱい叫び続けたけど、私の形は変わらないままで、今日も線路の前で竦む。こんなに生きづらいならちゃんと、泣くということを知って辛さを認められたらよかった。感情なんてとうに捨てたから、私は私を愛せないままだとか。

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