文的対話

 苦しさの理由とか寂しさの所以とか、見つからないから今日も苦しくないし寂しくもない。そう言い聞かせたら世界も未来も変わる?そんな訳ないだろう。君は笑う。

 誰かがさっきまで座っていた椅子に残る体温と尻跡。それは次に座った私にこびりついて、洗っても擦っても二度と取れることはない。体に蓄積された人々の尻の感触を、今日も忘れられないまま手先が悴む。

 嫌われるのが怖くて好きと言えなかった訳じゃない。そうじゃなくて、近づくとずっと好きではいられないから。だから好きと言わなかったんだ。って、そういえば前に言ってたけどさ。結局のところ届かない思いに酔いしれているだけなんじゃない?いいや、僕だって人のことをとやかく言える立場じゃない。僕は僕しか永遠に愛せない。

 もっと楽に生きたかったというのは失望なのかそれとも希望なのか。あなたの人生観が死生観の対義語ならもうあなたの話に興味なんてないけど、もしも類語だっていうなら、ちょっとだけ触らせて?

 僕に残った君の体温は僕を蝕んで、いつか君を食い殺してしまうかもしれない。それでもそれが君の体温なら、僕は後悔なんてしない。

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