銃爪

 宝くじが当たる心配をいつもしている。そもそも宝くじを買ったのかは読み手の想像に任せよう。いつも、当たったらどうしようと考えている。そのお金のつかい道というよりは、誰かに言うか言わないかとかそういうこと。そして莫大な税金はいつどうやって持っていかれるのかということ。心配ばかりしている。生きるとは不安を感じることだと言わんばかりに。

 そうそう話はかわるけどね。あのクソジジイがね、そうあの挨拶は大事だとか挨拶をしている私に言ってくるノリが大好きなアイツ。奴にさ、半径50cm以内の距離で、そういう状況下で、挨拶をしたの。声をかけたらね、こちらをチラリとも見ずに返事をしたの。挨拶は大事なのに、可笑しいな。新人の男の子を少し可愛がっているのも気味が悪い。

 それとね、昨日久しぶりに、ちゃんとまたお話を書こうと思ったの。だから打ち込んだら、短編のうちに収まっちゃって。でもまだ続きを書こうと思ったときに限って連勤の真っ只中で時間はない。それに皮肉を言おうにもお約束を知らないから。ああなんだかずうっと哀しい、そしてさらに淋しい。ひとりがこわいのは消えてしまいそうになるから。ふたりがこわいのは消えてしまうかもしれないから。

 いつもなんで私がって、なんでお前がって、思うのは仕方もないけれど、それでも他人を赦しているのは、赦されたいからだよ。それなのに私を赦してくれるのがごく少数なら、もうどうするべきかわからない。

 もしも宝くじが当たったなら、買いたくて諦めた服を買おう。少し贅沢な食事を一週間して、やりたくもない仕事はとりあえず辞めて、それから今後について考えて、貯金をする前に税金を払おう。今の私のために。もしも宝くじが当たったら、あなたに会いに行こう。どこまでだって。あなたがこれを求める限りは。

 当たれ。当たれ。当たれ。いつも願っている。見下げた固い地面に祈っている。私の冥福を。その前提にある幸福を。認められる日を。自分を許せる確固たる朝を。


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