分合夜話

 目が合って分かり合えて感動した夜も過ぎ去って当たり前になるといつか忘れて消えてしまう。忘れないために突きはなして封じ込めようと思ったけれど、どうもままならなかった。それならいつか忘れてもいいから、それまでは大切にしておこう。そう思った。春の風を忘れるのは秋の風と出会うからだ。だれかと出会ったからあなたを忘れるなんてことは決してなくて、あなたと過ごした1月を忘れる理由はあなたと過ごした11月だった。

 あなたはいつもあなたを演じていた。そんなところも好きだった。私はいつも私を虐げていたのにそんなところも愛してくれた。多分が口ぐせでいつも曖昧なところだけ私とよく似ていて、苛苛したり可愛く思ったりした。

 明日もしまた会えるなら、今日より素直になれたらいい。それができなくても少しでも多く笑えたならいい。私があなたの笑顔を見たいように、あなたも私の笑ったところを見たいなら、不意に笑い合えるといい。あなたのことを初めて愛おしく思った夜や翌朝のことはなんとなくしか覚えていないけれど、あの頃の意識、今の無意識が繋ぎ止めている関係を、いつまでも育めたらいいのにな。

 願うのは星や月にではなく、神にでもなく、ただ、あなただけに。あなただけに願う。あなたに私の昼を預く。

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