亡くして、夜が来る前に

 12分に1回死にたいと思うの。1日に何度死んで、1年で何度死に続けているのかしら。簡単な算数の問題もぼやけた世界では曖昧なままだわ。1時間に1回くらい、それでも生きたいとか思ったところで、まやかしみたいなものだもの。

 自分から遠ざかっておいて、愛せなくなるのも愛されなくなるのもしんどいなんて。勝手なことばかり言うのね、私。ずっと好きなんだよ。そんなこと知っているから、言葉は呪いにもなれなくって可愛そう。お腹が空いたって何も食べたくないし、気だるくって眠たくったってなかなか寝付けない。それで起きる時間には体は寝たがるの。末っ子はワガママっていうけれど、ただワガママな体、ってことなら、そういう意味でワガママな体なだけでよかったのに。欲はいつまでも消えないから、胸の奥が絞まるように痛い。もう他人なんて世界に存在しなければいいのに。そしたら私の体も少しばかりは軽くなると思うし。

 喉から手が出るくらい欲しかったはずでも、本当に喉から手が出た日にはそれどころじゃあなくなっちゃうと思うの。きっと変な医者とかに面白がられてべたべた触られて材料扱いよ。だから引っ込めてきたの。これまでずっと、全部。そのほうが楽だから。それなのにズカズカと両腕を突っ込んで子宮まで引き摺り出したあなたに、ぽっちでも責任が取れるのかしら。臓器だけじゃなくてこの靄と女めいた体も、分解して亡くしてしまってほしい。もしそれができたら、褒めてあげる。いつかみたいにまた、あなただけを愛してあげるわ。ね、どうかしら。悪くないと思わない?

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