フウセンカズラ

 呼吸の仕方さえ忘れてしまっても、あなたからもらった愛憎だけは決して忘れない。だってこれは美しいものでもなんでもなくって、ただの呪いなのだから。あなたに愛された記憶が前世から消えなくて、みすみす今世に産まれてきてしまったわ。どう責任取るおつもり?あなたに憎まれた後悔だけが、前世を全うした理由だったの。

 今世のあなた、私のこと、憶えていないといいけれど。だって憶えていたらあなた、私に構わずには居られないでしょう?憎んでしまうとわかっていても。

 私そろそろ解脱したいの。ねぇ、許してくれないかしら。なんて、他人行儀で笑っちゃうわね。愛し合った仲なのに。しかもこんなこと誰かに語っているうちは絶対、神にも仏にも相手にされないわ。

 ああそうかそれならあなた、いっそ今世も私を愛して、しまいに憎んでしまっては?

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