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抜け骸

 忘れないために歌っていたあなたは、歌うことに必死ですべて忘れてしまったようだ。忘れるために泣いた私は、その涙を捨て切れなかったせいでいつまでも忘れられない。世界は皮肉で溢れているわ。いつも、目が眩むような忙しない日々を、壊してしまいたいと願っているの。皆そう願っているのに、この世界は酷く頑丈だから、ちょっとやそっとじゃあ壊れない。私はあなたよりも強情だから、あなたの声には惑わない。

 おはよう世界とさよなら私は反対語なのによく似てた。

 あなたに言えなかったさよならが私のなかで鳴り響く。繰り返して止まない。まるで狂ったスヌーズ機能。おはよう世界と叫んでみたけど世界は私なんて知らない。だから私は世界なんて要らない。

 あなたに奪われた私は今日も世界を搾取する。違う、変なこと言わないで。社会に搾取、されてる訳ない。うるさいだまれようるせぇな。愛も乞いもしちゃいなかったってば。

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