抒情少女

 夜をじっとずっと見ていた。すると頼りない雲の隙間からすっと、朝が顔を出した。こちらの様子を伺うようなそいつは、自分にしか見えていないのかもしれないし、皆にちゃんと見られているのかもしれない。おはようと声をかけるとそれは、力なく笑ってまた、空に戻っていった。

 朝を待っている窓辺の少女に、夜は優しく声をかける。少し怖がっていた彼女も、気がつくと仲良くおしゃべりしていて、一緒に朝を待ちましょう。なんて言う。朝がくる頃には帰らなきゃいけないんだ。と夜が伝えると、彼女は寂しそうな顔をしたがすぐ、夜のために笑ってみせた。朝にはまだ会えないけど、君に会えたからいい夜だ。少女にそう伝えて朝に体を預ける夜。少女は夜と一緒に眠りについて、起きたら昼になってしまっていた。私も朝に会えなかったじゃない。と彼女が空に怒ると、昼がごめんねと頭を下げた。彼女が笑うと、空からは少しだけ雨が降った。

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