夜遊び

 いつからだろう。あなたに期待を抱かなくなったのは。無条件で愛するようになってしまったのは。数年前はもっとちゃんと希望や期待を抱いていた。愛したいと願っていたから、その理由を探していた。でもいつからか私はあなたを愛していると思うようになった。そしてこれもまたいつの日からなのか、あなたへの期待は薄くなっていた。

 あなたは私の感情を動かすのが上手だから、いつも応えてくれるから、それで充分だと思っていたの。それでも今日みたいな、ほらよく言う、いい意味で期待を裏切られるような真似されちゃうと、もう、あなたにそれ以上を求めたくなってしまうわ。

 いつもは荒々しく弾くギターを、上手く歌えないことへの言い訳みたいにこれでお別れだよと言わんばかりに、私を扱うよりもずっと優しく弾いていた今宵のあなた。締め付けられた胸があなたの一挙手一投足で大きくなって小さくなった。

 私にみたことのなかった世界を。いつだってあなたは自分に誠実だったからね。結果的に、見せてくれただけなんだけど。しかもその分まわりには不誠実だったのかもしれないけど。

 今夜あなたにまた愛を。って、誓いは立てるだけだからいつ折れちゃうかわからないわよ。あなた、油断しないでよ。でもまぁそうね、頬が緩んでいたら10秒後に抓って教えてあげる。

 あなたが好きなあれを私は好きになれないかもしれないけど、あなたがそれを好きな理由は十二分にわかった。何の教訓にも解決にもならない大してオチのないストーリーは私たちの生きている世界によく似ていて、ここにも面白さはあるのだと思い出させてくれた。物語の大事な部分が結だとしたらそれは自分で決めるべきで、そのために転がったり頭を垂れたり起き上がったりするんだね。

 あなた、顔を出すのも大概に。愛してくれる人を存分に、明日も愛してやりなさい。また、会いに行くから私のことなんて忘れていて。

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