空中分解

 だから私たちは泣いた。結局何もできない不甲斐なさに。2人の狭い狭い溝に落ちてハマってしまった車輪に。目を腫らして声を枯らした。それぞれの未来とその安寧を祝して。不安定な気候は錯綜する感情を、なんて月並み。だけど君とみる月はどんな形でも美しかった。

 あの日の憧れも、思い出したら癒えそうで寂しい。だけど消えそうな記憶こそ、いつまでも消したくなくて倦ねたって捨てられないそれだから。だからまた強く焦がれて、だからまだずっと愛してる。

 お互いなんとなくで憎み続けるのが真実の愛だったならもしかして、私たち叶えられたのかしら。それとも愛の比重で押し潰されて、穢い憎しみになってイヤになっている頃合いかしら。こんな誰にも伝わらない私の追憶なんて、いつまでも亡くならないといいのだわ。

 君に、伝えられるうちにこれだけは伝えておくね。なんて、君とかこれとか曖昧三昧。ねぇ、私オカシイのかな?鏡の奥の誰かと笑う、真夜のなかは夢のそと。

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