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ねこじゃら

 声をかけるとこちらを見やって頷いた。彼女なのか彼なのか私は知らないが、私たちは写真を撮った。その帰り道に、生きているのか死んでいるのかわからないセミが転がっていた。一緒に歩いていた子は、そのセミを放っておけないと言ったが、私は、放っておいてやる優しさもあるんじゃない?と。それで、その子がセミから逃げられているのを、ぼーっと眺めた。

 動物は少し苦手だけど、あの猫とは話をした。動かない理由も家族構成も、前世の思い出も話してはくれなかったけど、あのこは私の話を聞いてくれた。だから、あのこは私のともだちってことでいいかな?勝手に言ってろよと、月が空と共に笑っている。夜だから。過ごしやすい夏の夜に、私たちは眠ることをやめた。

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