私と君のためだけの部屋

 息を吐くのが辛くなったからここへ逃げてきた。ここは秘密基地みたいなところ。だけど秘密基地とはちょっと違う。ここだと大嫌いないじめっ子に見つかって石を投げられることはない。いや、昔から特にいじめられるようなタイプではなかった。でもそうだ、近所の変なおじさんに邪魔されることも、親に問われることも、同級生にバカにされることだってない。それなのに誰かが味方になってくれるかもしれない。敵もいないのに、味方になってくれるかもしれない。ここはそういう場所。そういう場所になるといい。

 種を蒔く。できるだけ沢山。自分で蒔いたからってどこに何を植えたかなんて把握していないから、咲いたときにお楽しみができるね。水をやる。いつか彼方に流れついて虹ができるように。君が見下げた地面が少しでも美しくあるように。君の踏んできたすべてが、君を踏んできたすべてを凌駕できるように。ずっと、弱いままの君が君のまま、その体内に強さも共生させられるように。君が君のまま生きられるように、心の底から願って。自分だってそうあり続けたいと空想して。

 君は私を強いと言ったが、私には君が強く見える。表面的な強さじゃなくて、本当の強さを君は内含しているのだと思う。ないものねだりでも皮肉でもない。君だから言っているんだ。どうか、いつまでも心を忘れないで。私みたいにつまらない奴にならないで。私は、君みたいになりたいんだから。なんて、最後の卑屈はやっぱりなしね。大好きだよ。おはよう世界、さよなら模範社会。

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