Joker

 それっぽい言葉で誤魔化さずに喋ったり語ったりするのは難しくって怖い。言葉を尽くしても伝わらないならなんとなくで生かしてくれと願ったのはいつだっただろう。あれから曖昧な言葉だけを重ねて連ねて、汲んでくれた相手だけはせめて大事にしてきた。誠実なのか不誠実なのかわからないけど、手に届く相手だけを愛することが悪いとも思わない。

 わかってもらおうとか高慢だから。だけど、どうせわからないよな。が同じようなものだとも知っている。どちらにせよ下らないなら、どちらだっていいのかもしれない。したいようにすればいい。他人を過剰に傷つけない限り君は自由なんだと、幾晩自分に言い聞かせてきただろう。そうでもしないと滅びたのだとしたら、何度も滅びかけたこの身なら、多少の痛みなんてどうってことないよな。

 自由は責任を有すると言うが、不自由の纏う責任のほうが重いって、前にも話したかもしれないね。どんな君でも許すってそのほうが生き甲斐がないとか息苦しいとか、そう思うなら逃げたらいい。君には私の隣を選ぶ権利がある。同様に、私を敬遠する権利がある。それなのに私は、君の枷になってでも触れてみたいと思った。なんて、ね。

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