あの子

 あの子を好きになったのは、あの子に恋をするためだ。好きってきっとそういうことだ。恋ってどうせそんなもんだ。あの子に恋がしたいのは、あの子を愛してみたいから。愛し方なんて学校では教わらなくて、それは年金の免除申請のよう。

 難しい漢字に振る仮名をルビと呼ぶあの子だから、国語のノートは暖色にしないと気が済まないあの子だから、だから僕は好きになったんだ。僕を見つめるあの子の瞳は、虚ろでそれは美しい。

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