これはとある我が国の話

 国を作った。100人ばかりの小さな国。私は王だから、皆私の言うことを聞く。だって逆らうと罰せられるから。

 私が隣の国に爆弾を落とせと言えば、国民は爆弾を落とした。そんなことしないほうがいいと言う奴がいれば、私は国民に処分させた。

 隣の国は、我が国が爆弾を落としたことに大層怒った。そこで争いになったけど隣の国は我が国の半数の国民しかいない小さな国だったから、我が国は勝った。結果うちの国民は少しだけ増えて、領土も1.4倍になった。

 言うことを聞く人が増えたのは都合がいい。私に文句を言う者は、私が言わなくともどこかへ消えた。多分誰かが処分しているのだろう。この世界は狭くて退屈だがとても生きやすい。

 最近、夢見が悪い。何故だろう。テレビや電気を消しても落ち着けなくて、ロクな夢をみない。家臣に当たり散らしてもストレスは晴れない。なんで私がこんな思いをしなければならないのだ。私は王だぞ。偉いんだ。もういい、酒を呑もう。酒に合う料理を持って来い。

 ああ、また、嫌な夢だな。国民に裏切られて襲われる夢なんて。警護はバッチリだから、城に攻め入られる心配なんてないのに。それに、こんなに尊い私の命を奪う愚か者なんてこの素晴らしき我が国にいるものか。

目を覚ますと、暗い部屋にいた。そうだ、ここは我が国の地下。また、王だった頃の夢をみたのか。もう随分と昔のことなのに。もう忘れたほうが楽なのに。

 床に散らばった食べかけのビスケットを野生動物のように口で拾って食べる。おいしい。横のバケツの水を舌で飲む。生き返るような味がする。いつの間にか発展していた地下国の連中から監禁され始めて何十年経ったのだろう。死ぬことも許されなくて、寝て食べて出すことを繰り返している。妄想しかやることなんてないけど、ワタシハイマガシアワセダ・

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