仮死実験

 一体どうすればいいのだろう。どうすればよかったのだろう。あの日彼女をちゃんと駅まで送っていけば、こんなことにはならなかった。いやもっと言うと普段から僕は情けなくて、ホテル代もいつも割り勘で、そういうところがなければ、彼女を守ることができたのだろう。でも一番悪いのはいつだって実行犯だ。そういうどうしようもない悪のせいで、消化不良を起こして、周りは自分を責めてしまう。彼女の心は深く傷ついた。でも僕は心のどこかで思っている。これでよかったと、彼女が僕のそばからいなくなる前に気付けて良かったと。絶対君には言えないけど、取られたのが1万2201円とポイントカードだけで本当に良かった。僕は君を損ないたくない。君より早死にしたくて煙草を吸い始めたけど、中毒になって君の前でも吸ってしまう。君は煙に巻かれて見えなくなった。僕の目も煙で真っ黒になった。ああ、死ぬ前に死んでしまいそうだ。と、初めて心中の心地よさが解った。

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