揺籃

 どうしてもなにも思いつかないときのための下書き。書いたときから下心でしかなかったはずなのに、君に見つかってしまった。君はそれを綺麗だと言って目を細めた。王様の服が君になら見えるのかもしれない。君ならあの国で、王妃になれたかもしれない。下着が変に音を立てて擦れたのに、何も感じない俺のそれとは大違いだ。

 頭の中で、虫の鳴く声が聞こえる。鈴虫でも蟋蟀でも蝉でもない。名前のない虫の泣く声。それは幼少期に流した意味のない涙を思い出させて、なんとも落ち着かない。耳の裏から君の声が聞こえる。信じていると君は言うけど、僕はいつだって僕を信じていない。だからきっとまた君のことも悲しませてしまう。明るかった夜空と、白いままでいてほしい君に告ぐ。その言葉を捕まえに今日も向かう。

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