此処有

 声とか立場とかじゃなくて、ただ言葉だけで繋がっていたかった。あなたと対峙する日なんて来てほしくない。言葉以外の世界は思惑を生んで、好きとか嫌いとかもっととかもういいよとか、そんな全部を存在させる。嫌だ、この温もりだけは喪えない。嫌われるほど愛したくもない。あなたと触れ合ってしまえばあなたを愛してしまうかもしれない。怖い。愛されるのも同じだけ怖い。

 痛い。胸の奥がずっと痛い。あなたに会えない今日が憎い。触れない今が嫌い。痛い。愛とかあなたとか本当はどうだっていい。誰とも触れ合うことのないこんな私でも生きているのだということと、その価値を世界に証明したい。そしてその世界のどこかにあなたがいてくれるといい。ずっと愛していたから。

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