祝辞:不幸

 キラキラ光る照明を見ながら、関係のないことばかりを思い出していた。左右の足の長さの均衡がまるで取れていない夢をふとみることとか、いつか誰かの言っていたそれっぽい言葉とか。

 私の見る世界をみている人はこの世のどこにもきっといない。それを孤独というのなら一生涯抜け出せないだろうけど、そんなのどこのどいつだってアラブの石油王だってNASAの責任者だって必ずしもそうだから突然、実はこの星は平等なのかもしれないなと思った。

 外を歩くと他人の幸せが目に付いた。部屋で丸まっていると自分の不幸ばかりが鼻につく。持ち帰った幸福が2%なら残りのパーセンテージはなんだったのだろう。私は世界を愛さなければならない。それが唯一の世界に愛される方法だから。

 こんな世界に愛されるために必死になっている私を笑ったあの人は、きっとどこかで野垂れ死んでいる頃ね。ああ、私は自分の幸福を願う手段を他人の不幸を望むことと見誤っている。けど、そんなこと決して認めてはならない。滑稽で可哀想な存在だとホームレスのジジイに鼻で笑われているなんて有り得ない。例えもしそうだとしても、正しいのはいつだって私のほうよ。大嫌い。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?