昼装束

 例え一生懸命書いたとしても私の書いた文章は、私は、呆気なく消費される。いや、それならまだよかった。食物みたいに、誰かの体に入り込んで一時期だけでも役割を果たしてくれるならよかった。そうしたら、低血圧に悩まされながら長時間の立ち仕事を強いられるこの身体も少しは報われた。って進退の心配もしたらどうだよ。

 耳を塞いでも自分の声はやまないし、カーテンを閉じて電気を消しても外の世界はなくならない。この空にナイフの刃を立てても、何にもならないから私は無力だ。無力だ。認めた瞬間から、少したのしくなる。無限の可能性は有限の私に留まり続ける。だからこそずっと愛でていられる。不意に大きな悲しみに襲われる。いつまでも、あると思うなと声がする。耳を塞いでも声がする。泣きたくても泣けない昼間には、ご褒美の甘い飲み物とか、大嫌いな先輩への愛の言葉とか、泣けなかった自分への慰めとか、衣替えとか。

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